まめだいふく

スワン・ソングのまめだいふくのレビュー・感想・評価

スワン・ソング(2021年製作の映画)
3.0
 不治の病に侵されたキャメロンは、自分の死によって家族が悲しむことが何よりもつらいと考えていた。そこで彼は最後の手段として、とある実験の被験者となることを決意する。それは、自分の記憶を移植した、自分と瓜二つのクローン人間を創るというものだった。

 いやこれは、なんとも深くて考えさせられる映画だった。

 自分が死んだ後も、自分と全く同じ人間が家族との生活を続けていく。家族は自分が死んだことにも気づかずに。

 家族にとってのキャメロンは同じキャメロンだけど、オリジナルのキャメロンにとってはあくまで他人。自分だけど自分じゃない男に家族を奪われるという複雑な感覚と、家族にとっての幸せを願う気持ちがごっちゃになって、精神的に不安定になるキャメロンの気持ちが痛いほどよくわかる。
 この難しい役どころをマハーシャラ・アリが繊細かつ力強い演技で魅せる。SFだけど、彼のおかげでリアリティが増している。
 とはいえ、クローン技術は発展しているのに治せない病があるという点に違和感を覚えたのも確か。
 とはいえ、本当にこういったことができる未来がやってきたら……そして自分がキャメロンと同じ立場だったら……と考えずにはいられない作品だった。

 いつの世も犬はすごい。ほんと、すごいな犬。

 ラストシーンは思いがけず泣いてしまった。
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