Jun潤

断捨離パラダイスのJun潤のレビュー・感想・評価

断捨離パラダイス(2022年製作の映画)
3.7
2023.07.06

予告を見て気になった作品。
ゴミ屋敷専門清掃業者のお仕事モノ。
ゴミ屋敷とまではいきませんが掃除ができない僕としては、おそらく引いちゃう気持ちよりも共感性の方が高いのではないかと恐々としつつ鑑賞です。

夢破れたピアニストの白高律稀は、ピアノ講師として音楽を続けつつ、新しいことを始めようと試みる。
そんな彼が見つけた職場は、ゴミ屋敷専門清掃業者“断捨離パラダイス”。
クセの強い市木八吉社長の元、ゴミで溢れる一軒家や賃貸の一室と向き合う。
律稀や、ゴミ屋敷の住人たちが捨てられないのは、ゴミなのか、それとも過去か、大切なものか。

断捨離パラダイスで働く律綺を中心にしつつ、部屋を片付けられない、ゴミを捨てられない人々それぞれの価値観や生活を描いていく群像劇。
上述の通りここまでゴミが溜まり放題になるほどではありませんが、僕も掃除用具を買うだけで満足したり、捨てて良いものかどうかわからなかったり、今じゃなくてもそのうちそのうちと掃除を後回しにしてしまったりすることには身に覚えがありまくりでした。

親子愛や大切な人の喪失、仕事と私生活のバランスなど、それぞれが違う事情を持ちながら、一歩間違えれば自分も同じような状態に陥ってしまうのではないかという不安に駆らさせる不思議な演出力がありました。

しかし他の邦画にも時々言えることではありますが、「あ、この場面こだわっているんだろうな」ということが伝わってくる演出があり、それ自体は問題ないどころか楽しめて観れたものの、そこに引っ張られて各キャラの芯を描く場面が結構不足していた印象が残りました。
こだわりの場面からは、群像劇にも関わらず、断捨離パラダイスを中心にした人同士の繋がりを感じることもできたため、キャラの掘り下げが浅かったことが余計如実に感じてしまったんだと思います。

ゴミ屋敷の住人たちは、捨てられないから、掃除ができないから部屋がゴミで埋まっていくというよりも、本当に捨ててはいけない、大切だけど直視しないように隠しておきたいことがあったんじゃないかと思いました。
観せ方を変えればいくらでもシリアスに観せれるところを、演出と律綺や市木社長のクセのあるキャラクターでもってコミカルに描かれていましたね。
Jun潤

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