みやび

断捨離パラダイスのみやびのレビュー・感想・評価

断捨離パラダイス(2022年製作の映画)
4.2
僕はADHD。子供の頃から片付けや整理・整頓が大の苦手だった。
大人になってもその状況は変わらず、ずっと悩んでいた。

ある時、これでは人生いけないと、冗談抜きで【100冊以上の片付け本を読みあさっては実践】を数年にわたって繰り返し、何度も何度も失敗しながら、”片付け”や”断捨離”をしてきた。

おかげで今では、それぞれの配置や人の動線も考え、しっかりと定位置を決め、効率的に収納&取り出しができるようシステマチックに物を管理している。


そんな僕が、この『断捨離パラダイス』というタイトルに食いつかない理由はなかった。どんな内容かも分からず、気が付けば即レンタル、即視聴していた。

最初の想像とは全く違う内容だったが、ゴミ屋敷問題を題材にしたオムニバス形式の作品で、最後は全てのストーリーがつながりを見せていく。

泣ける感動とはまた違う、感動を味わえた。


元ピアニストの高律稀(篠田諒)は、突然原因不明の手の震えに襲われて、キャリアを絶たれてしまう。

ピアノに全てを捧げてきた律稀は絶望から立ち直ろうと、チラシで見かけたゴミ屋敷専門の清掃業者「断捨離パラダイス」で働くことに。

ゴミ屋敷の清掃を通じて住人たちが抱えている様々な事情を目にする内に、華やかだったピアニスト時代には想像もできなかった世界があることを知る。といった内容。


大変申し訳ないのだが、僕が知っていた俳優さんは「泉谷しげる」だけ。けれど、これが逆によかった。

それぞれの役者さん達が、ときには悲しく、ときにはコミカルに、魅力ある演技を見せてくれる。


「リレーとモンスターペアレント」のくだりから笑う。

「相手のことを全然考えてない彼氏」も、あるある過ぎて笑う。

「先生の回」は、鳥肌が立った。


いろんな人生があるんだな。。


人によっては、「つまんねー」って思う作品かも知れない。

ただ僕は、決して恵まれていたとは言えなかった子供時代や、片付けに本当に苦労してきた自分の人生とも重ね合わせながら、様々な思いを巡らせて観ることができ感慨深かった。

自身は「テレビに出るようなゴミ屋敷」とまではいかなかったが、とても登場人物たちの心情が理解できた。


心理学でも分かっているが【心の状態と身の回りの状態はリンク】しているということ。

「心を解決する必要がある」と、心理学もたくさん学んできた。


本作ではその背景を充分に分かった上で物語が組み立てられており、心の細かい描写に唸る。


人にオススメできる作品かと言われれば分からないが、僕にとっては、とても観てよかった作品。
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