ぶみ

探偵マーロウのぶみのレビュー・感想・評価

探偵マーロウ(2022年製作の映画)
3.5
真実は、闇。

レイモンド・チャンドラーが上梓した私立探偵フィリップ・マーロウシリーズの一作『長いお別れ』(原題:The Long Goodbye)の続編となるベンジャミン・ブラック作『黒い瞳のブロンド』(原題:The Black-Eyed Blonde)を、ニール・ジョーダン監督、リーアム・ニーソン主演により映像化したアイルランド、スペイン、フランス製作のミステリ。
突然姿を消した愛人を探して欲しいとの依頼を受けた探偵マーロウの姿を描く。
原作は未読。
かつて、ハンフリー・ボガートやロバート・ミッチャムが扮してきたマーロウをニーソン、彼に調査を依頼する女性クレアをダイアン・クルーガー、クレアの母ドロシーをジェシカ・ラングが演じているほか、アドウェール・アキノエ=アグバエ、ダニー・ヒューストン、フランソワ・アルノー等が登場。
物語は、1939年のロサンゼルスを舞台とし、調査対象となった映画業界で働く男性ニコが、会員制の「コルバタ・クラブ」の前で轢き逃げにより死亡していたことが判明するも、マーロウが捜査を進めるにつれ、その裏にはハリウッドの闇があることが描かれるのだが、やはり注目は、記念すべき出演100本目となり、マーロウ役を演じるのを切望していたニーソン。
シリーズ作品は、マーロウをエリオット・グールドが演じたロバート・アルトマン監督『ロング・グッドバイ』しか観たことがないため、マーロウ=グールドのイメージだったが、グールドがボサボサ頭の一見冴えない印象であるのに対し、本作品は、いつものスラっとしたニーソンであり、その長身や、スーツを着こなす洗練された雰囲気は渋さ満点。
また、ニコの妹を、先日観た『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』で、エレナの妹役として登場していた広瀬アリス似のダニエラ・メルシオールが演じているのも注目ポイント。
1920年代のハリウッドを舞台としたデイミアン・チャゼル監督『バビロン』よりも、十数年後の時代設定ではあるが、マーロウが辿り着く事件の核となっているのは、同作と変わらず、ハリウッドの華やかさの裏に隠された闇であり、時代は変われど、何も変わっていないことが手に取るようにわかる。
そんな闇に分け入っていくマーロウの姿は、探偵に扮しているものの、サスペンスものに多く出演してきたニーソンが得意とするところであり、堂に入ったもの。
そんなニーソンのアクションシーンは、皆無とは言わないが殆どなく、バビロンのような派手さもない反面、当時の雰囲気を再現したハードボイルド・ミステリとして満足いく内容であるとともに、登場人物が多く、人間関係も複雑であるため、これから観る場合には、ある程度の予習をおすすめしたい一作。

皆、誰かを探してる。
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