えるどら

ONE PIECE FILM REDのえるどらのレビュー・感想・評価

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)
3.2
終盤に怒涛の展開、最終決戦は必見

面白かった。それは間違いない。
見終わったときの感動はひとしおだ。
だがどこかやりきれない気持ちが残っていた。
それはなぜかと考えていた。
数日考えて出た結論は「前半で疲れてしまった」である。

終盤に差し掛かる前にへとへとになってしまったは2つある。

1つは開始直後から続くウタのライブパート。
曲も映像も素晴らしいが私はMVを見に来たのではないんだ。
「竜とそばかすの姫」や「君の名は。」の時も感じたが、私は映画の中で音楽をフルで流すシーンがあまり好きではないらしい。
音楽を聴く以外のことができないシーンはどうにも退屈になってしまうのだ。
数曲なら素敵なライブシーンとして見られたのに、ああも連続で歌、歌、歌と来られると疲れてしまった。

2つ目はキャラの台詞と野次馬だ。
詳しいことは忘れてしまったのだが、前半部分のキャラの台詞にどうにも寒さを感じてしまったのを覚えている。
サニーやブルーノのマスコット化も「いるのか?これ?」と冷めてしまった。
何より、観客の身勝手な野次馬が苦手で、「こういうのもう良いって…」とため息が出た。
勝手に「竜とそばかすの姫」に重ねてしまったのかもしれない。
口コミに踊らされて下手に期待していた分、”大衆向けのジャンプ漫画のスピンオフ作品”ぽい部分に冷めてしまったんだと思う。
勝手に期待外れになってガッカリしたのが疲れた原因のひとつだ。

そんなヘトヘトの状態でもウタの能力が明らかになるシーンからは楽しく見られたと思う。
シャンクス登場シーンではさすがに涙がこぼれた。

本作、冒頭で「大海賊時代は一般市民にとっては地獄の時代である」という説明から始まる。ワンピースという作品にとって、このテーマは避けては通れない部分でありながら、主人公が海賊である以上できれば描きたくないテーマでもあると思っていた。そこに切り込む、あるいは今後本編でも切り込んでいくとなると、かなりの期待が持てる。
大海賊時代に対抗する「新時代」を作ろうとするウタは実にいいキャラクターだった。

FILM”RED”というだけあって”赤”髪は勿論ながら海軍総帥”赤”犬のやり方も印象的に描かれていたように思う。ロジャーによって始まった「大海賊時代」とウタが作る「新時代」、そして正義の名のもとにそれらを終わらせようとする海軍。「犠牲無き正義などありえない」という言葉とともに民衆に銃口を向ける。
こんな時代で一体何を信じればいいのか、とウタに縋る民衆の気持ちがわかった気がした。

最終決戦、個人的に熱かったのはウソップの見聞色だ。映画のウソップはやたらフィーチャーされるからいつもカッコいいね!見聞色で親父と視界を共有するのは熱すぎる。
ルフィのギア5もこの間本紙に出たばかりなのにもう映画で動いてた。何も考えず「おぉ~」ってなってた。

お祭り映画ではありながら、話を作るのに必要なキャラで今生きてる人を選抜して連れてきた、みたいな印象だった。特にコビーはナイスすぎる人選。
前半で疲れてしまってダレてたので、視聴後はあまり心中穏やかではなかったけれど、落ち着いてみると終盤の盛り上がりは良かったなぁと思う。
何より、ワンピース本編の期待値がさらに膨れ上がった。
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