バクチャン

ONE PIECE FILM REDのバクチャンのネタバレレビュー・内容・結末

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

世界の歌姫・ウタのライブに来た麦わらの一味。でもライブの最中にウタはルフィの幼馴染でシャンクスの娘で海賊絶許で悪魔の実の能力者で…と要素モリモリ少女なことが判明していくーーー…!という話。

全部濃い味にしたけど大丈夫だよね!全部食べれるよね!と屈託のない笑顔で出されたご馳走を頑張って平らげるような感覚を覚える映画でしたね…。全部油増し増し系のおかず。
というのも要素がアホほど多い!!!予告でなんとなーく知ってた情報は「シャンクスの娘」「ルフィの幼馴染」「世界の歌姫」という「あ〜夢小説ヒロインみたいな女の子が出るのね」と納得できるもの。
いざ観に行ってみるとそこに現れたのは「シャンクスの娘です!ヒロイン兼ラスボスです!ルフィとも小さい頃よく遊んでました!昔は海賊を目指してたけど今は海賊を憎んでます!シャンクスに裏切られた経験があります!悪魔の実の能力者です!私の力ですげえ魔王を召喚できます!難しい討伐条件が(以下省略)」くらい要素モリモリの夢小説ヒロイン。とっ散らかるだろうが物語が!!というくらい全部盛ってくれた。そして無事とっ散らかってましたね…という印象。
せめて一つでも要素を削ってくれればもっとすっきりした映画になったと思うんだけどな〜と思わずにはいられない…。
そして最後らへんが完全にファンサ映画。人気キャラ共闘させるの楽しいよね〜!の感が否めない。違うんだよ…共闘は楽しいけど原作軸とかそういうのでやらなくていいんだよ…になっちゃった。

これはワンピースじゃなくてよく知らないアニメの映画なんだ…という感じで見ればなんとなく連想されるのはお薬の中毒とかそういうお話。いつまでも大人にならず痛みや辛さのない夢の中で理想に浸りたいウタと、何がなんでも成長して痛みや辛さも乗り越えて理想を掴みたいルフィという関係性は、お薬に翻弄された女の子が急に自分の妄想に介入してきた現実に戸惑う物語のように思えました。キノコが出てきちゃったから余計に連想しちゃった。最後にウタの死を持って解決するのも含めて後味が悪〜!と思うのはそういうことを考えてたせいかなと思います。お薬に振り回されて周囲の人を巻き込んでラリってた女の子が急に幼馴染の男の子や自分を捨てたお父さんから現実に引き戻されて、でもお薬の影響で死んでしまうしその後の世界は普通に回る…う〜ん嫌〜〜!社会派映画とかでやれ〜!!!ワンピースでやるな〜!!!

いっぱい悪口言ったしいいところを言いましょう。Adoの歌いい〜!!かっこいい〜!!ライブのシーンは迫力あるしワンピースの女にあるまじき絶望顔ゲス顔諸々で歌い上げてくれるウタさんはほんとよかった。狂気に浸った少女ってワンピースではあんまり見なかった気がするからね!いたのかな!?
あと個人的にうお〜!!だったのはウソップが「おれの親父はおれのことほったらかしにしてたぜ!」的な話をするところ。今までウソップは親父のことを盲信している(というかワンピースの海賊側は大体海賊というものの良くない部分をスルーしている)ような感じがしていて、「妻の死に目にも会いに来ない、息子がほぼ孤児になってもスルーし続けた親父を誇りに思ってんの!?マジで!?」と思ってたんだけどもこのお話で「あ、なんだかんだウソップは親父の悪いところもちゃんとわかってるんだ」「分かった上で親父のことを誇りに思うって言えるくらい腹を据えてるのか…!」と感動したんです。彼のいいところは自らの弱さやずるさを知っているから他人のずるさや弱さをするりと受け入れられるところですよね。

「原作軸に介入できる人間を映画のメインキャラとして出し、映画の中で綺麗に片付ける」というのが最近のワンピ映画の戦法と思うんですけどそろそろその方法にこだわらなくていいよ〜〜〜!!!大昔みたいに冒険で立ち寄った島でなんやかんや巻き込まれました〜!でも拳で解決!やったね!で終わりでいいよ〜!!と懐古厨が声を上げそうになる映画でした…でもAdoのライブはほんとよかった。
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