とりん

ONE PIECE FILM REDのとりんのネタバレレビュー・内容・結末

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

2022年78本目(映画館38本目)

週刊少年ジャンプで連載している世界的大人気漫画ONE PIECEの3年ぶりのアニメ映画。原作の尾田栄一郎先生が総合プロデューサーを務める'FILM"シリーズは"FILM GOLD"以来6年ぶりとなる。
TVアニメは15年くらい観てないが、映画化作品はこれまで全てしっかり観てきている。その中でもかなり異質な作品となった。というのもストーリーよりもバトルシーンよりなにより特出すべきなのが歌唱シーンであるということ。もちろんバトルシーンがあるにはあるけど異次元すぎるし、冒険シーンはなく、本来のONE PIECE作品、ONE PIECE映画をもとめている人ならば、少し残念に思うかもしれない。ただそれを差し置いてもウタの歌唱シーンというのはとんでもなく魅力的なものだった。
ウタの歌唱担当はAdo、彼女の歌は「うっせぇわ」くらいしか知らないけれど、歌声が素晴らしいことは知っていた。それがこれでもかと感じることができた。楽曲提供にも中田ヤスタカ、Vaundy、Mrs. GREEN APPLE、澤野弘之などの人気アーティスト、プロデューサーという豪華作曲陣が担当しているだけあり、楽曲の幅も広いが、それを声色使い分けて歌い上げるAdoの歌唱力がとてつもないなと感じた。いやはやえげつない。

ただ正直今回の映画で良かったと思える部分はこの歌唱シーンの歌と演出くらいだったかなぁと。
今回のキーパーソンとなるウタは、主人公ルフィを海賊へと導いたともいえる大海賊シャンクスの娘というファンなら誰もが飛びつくような設定がまずある。
だからこそ観に行こうと思うファンも多いだろうが、先も言ったようにやはり普段のONE PIECEと全体のテイストが違うからなんとも。
歌が良すぎたからというのもありガッカリまではいかないけど、なにを観にきたんだっけ、何を観せられてるのだろうという気持ちにもなった。というのも尾田先生が関わっているので、ウタのキャラ設定を始め、物語の設定自体はかなり良くできている、納得いく。
ただトットムジカに関してはちょっとファンタジーがすぎるし、まぁそれを差し置いても普段交錯することのないキャラクターたちが一堂に介し、共闘するというのはやはり腑に落ちない部分が強すぎる。
コビメッポは仲良いからまだ良いけど、CP9はまだしも、特に今回はおそらくワノ国の前の話だろうから、直前にやり合っていたビッグ・マム海賊団と手を組む有り得なさすぎる。
原作との温度の差が激しい。いろんなキャラとの共闘というのは前作の"STAMPEDE"でもあったけど、あれは懐かしキャラばかりで同窓会な感じあったけど、今回は直近キャラすぎる。

原作ではまだほぼと言って良いほど出演シーンがないシャンクスの戦闘シーンを観れるだけでも結構な価値はあるけれど、正直それは原作で先に観たかったという気持ちも強い。だから本作に対して複雑な気持ちだ。
原作ではひとつの話で10巻続くなんて普通だし、バトルだけでも数巻あったりする。その上で過去の話なんかとも伏線回収など複雑に絡み合っている。そう考えると2時間弱に新キャラの設定、冒険、バトルを原作同様にそれぞれ濃く盛り込むなんて不可能に近い。さらに今回はそこに歌唱シーンも交えているので、原作と比べる方が野暮な話だ。そう考えるとウタをファンなら誰もが知るシャンクスの娘というそれだけで成り立つようなわかりやすいキャラ設定にし、歌唱シーンとバトルシーンに比重を置いたのは案外悪くなかったのかも。
バトルシーンに関しては迫力はあるものの異次元やファンタジーすぎたし、なによりあの敵キャラとの共闘だったりというのがイマイチ受け入れられなかったなぁ。

長年アニメのONE PIECEを観てなかったので、シャンクスもコビーとかも声こんなだったっけとそこにも違和感を感じてしまった。リンリン、バルトロメオあたりも違和感あった。
だから今回のウタのセリフパートの声優である「交響詩編エウレカセブン」のエウレカなどで知られる名塚佳織という名声優を持ってきて、あまりにもハマり役だったのも有り、すごくしっくりきた。むしろ他の準レギュラーを差し置いて。しかもその育ての親でもあるゴードン役には津田健次郎という名優を持ってくるあたり、いつもなら俳優とかを起用するのにしっかり声優を起用するのは力の入れ具合が良い。
あと戦闘激しすぎるし、そこで複雑な技名を言うもんだから技名何言ってるかわかんなかった。いつもの原作なら文字なのでわかるけど、技を見てあーこれねって思ったりした笑

ウタのキャラとても好きだったなぁ。みんなを苦しみや悲しみのない幸せにするための新世界へ導くというのも彼女の過去の話含めすごく腑に落ちたし、シャンクスとの絆も痛いほどわかった。原作にも出てきて欲しいなぁ。てかちゃんとした声優使ったのなら本編出すつもりあるのかな。
そしてやっぱ歌が良いよね。今回の使用楽曲がまとめられたアルバムがリリースされており、映画観終わった後ずっと聴いてた。Adoすごいなってしかならんな。そしてこのアルバム、ONE PIECEにおける海賊の歌でお馴染みのビンクスの酒が入ってるのが素晴らしい。
とりん

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