ぶみ

渇水のぶみのレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.0
渇いた世界に、希望の雨は降るのか。

河林満が上梓した同名小説を、髙橋正弥監督、生田斗真主演により映像化したドラマ。
水道料金滞納者に対し、給水停止を執行する市職員が、生活困窮する人々と対峙する姿を描く
原作は未読。
主人公となる、市水道局職員、岩切を生田、同僚の木田を磯村勇斗、市料金課課長を池田成志、岩切の妻を尾野真千子、水道料金滞納家庭の母を門脇麦、
その子となる姉妹を山﨑七海、柚穂、水道料金滞納者役を宮藤官九郎、宮世琉弥、吉澤健が演じているほか、チョイ役で、篠原篤、柴田理恵、森下能幸、田中要次、大鶴義丹、松村邦洋等が登場。
物語は、水不足で給水制限となる中、水道料金滞納家庭の水道を止めて回る市職員が、生活困窮に陥っている幼い姉妹と出会ったことで変化していく様が描かれるが、淡々と職務をこなす岩切を、生田が好演。
確かに、水道局職員に限らず、税の滞納や、生活困窮家庭に相対する現場の職員は、感情を抑えて、ある程度システマティックに事務をこなしていかないと仕事が回らないし、職務としてやっているのにもかかわらず、あたかも処分を執行する側が悪いかのように罵詈雑言を浴びせられるシチュエーションも少なからずあるため、メンタルをやられてしまう職員がいるのも現実。
そんな現場職員の実態を、可視化させているだけでも一見の価値あり。
また、暑さや渇きを表現するためか、全体的にざらついた映像の質感となっているのだが、それでも今一つ、給水制限が行われるような灼熱地獄のようには見えなかったのは、残念なところ。
そして、前半は滞納者と対峙する岩切の姿が、お仕事ムービーかのように丁寧に描かれる反面、後半、岩切の心情や行動が変化していく様が、カット割りといい、台詞といい、何となく乱雑になってしまった印象は否めない。
今や、邦画で見ない作品はないのではないかと思わせる磯村が、本作品でも生田とともに好演しているとともに、題材が興味深いものであっただけに、後半の失速ぶりが残念でならない一作。

太陽と空気と水は、タダで良いんだ。
ぶみ

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