メッチ

渇水のメッチのレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.5
この渇ききった世界で、社会的に見て弱い立場の人に手は差し出しても、干渉し過ぎてはいけない。

公共サービスを取り扱った作品だけあって、訴えているものがある社会派な作品だと思います。
原作は1990年代ということ考えると、ちょうどバブルが弾けた頃ですが、それでもまだその惰性があった時代。その当時の視点で見れば、公共料金払えないなんて考えられないと思っていた方の方が多かったことでしょう。
しかし、それから30年経った現代で、この作品の訴えたいことを理解できない方はそこまで少なくはないかと思います。世界的に見れば、コロナ禍やウクライナとロシアとの戦争。日本の視点で見ても、電気代の高騰や上がらない給料に対して上がり続ける税金。金銭的余裕はなくても愛情はちゃんと注いでいる家族もいれば、金銭的余裕があっても暴力や教育の虐待をしている愛情が渇ききった家族もいる現代。
30年経ってからでないと、映画化にしたところで響き渡らない内容でした。

また、あの大人たちの都合で色んな面で取り残される姉妹と生田斗真さんが演じる水道局員の主人公の心の変化は感じられましたね。見ている私でも間違ってはいると思うけど、どうしようもできない感じ、同情してしまいます。
あの渇いた世界で行動できる”理想”は主人公でしょうけど、”現実”は留まってしまう磯村勇斗さん演じる後輩ですね。私もあの立場でも手は差し出せませんね。手を差し出さないのはひどいことかもしれません。しかし、作中に支払いの滞納者の中に自分のお金ではなく付き合っている彼女や母親から払ってもらっている人がいるように、”やってもらえるのが当然”という方も世の中にはいます。なので、ただ単純に手を差し出せばいいわけでもありませんからね。

”本当に今の状況を変えたい人の中には、干渉し過ぎないことがかえって一歩踏み出すきっかけになる人もいる。”と、私はそう思います。
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