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メタモルフォーゼの縁側のRickのレビュー・感想・評価

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)
4.8
 自分の為したことに自信を持てなかったり、自分の不甲斐なさに涙したり。自意識と呼ばれるものに翻弄されることなんて、案外どれだけ歳を重ねようともそんなに変わらないんじゃないだろうか。その経験があるから今がある。その経験があるから、理解し合える。何か一つのキッカケさえあれば、いわゆる年齢の壁なんて存在しないものなのかもしれない。確かに、積み重ねてきた時間や経験の重みは異なるだろう。それでも互いに互いの背中を支え合って、ケアし合って、せめてもう一歩ずつでも進むことができる。そんな明るい未来を示してくれている。それはとてつもない希望であり、目指すべき世界に違いない。
 BLを媒介にしながらも、ある種の年の差シスターフッド的な要素に満たされている本作。もちろん主役は雪さんとうららさんに代表される2世代だが、さらに間にもう1世代がスッと挿し込まれている。そのおかげで、どの世代にも自意識や壁にぶち当たって、それぞれにそれぞれの方法で悩み戦っていることが描かれる。深い視座で広い射程を飲み込んでいるのが、この作品のたまらないところだ。なお、今作は芦田愛菜の良さが全開になっている。非常にリアルで現代的な「オタク」として完璧な演技だった。
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