ゆう

メタモルフォーゼの縁側のゆうのレビュー・感想・評価

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)
3.5
原作知ってて実写は宣伝時から気になってました。

年の離れた友達ふたりの日常を描く作品ということもあってか、夏のうだるような暑さ、縁側から吹き抜けていく心地の良い風が感じられるなど場の空気感が丁寧に描かれていてまるで自分もその場にいるような気分になれた。
古民家の床板を歩く、アスファルトで塗装された道路を駆ける足音や包み紙を開く音など効果音の使い方にもこだわりを感じる。

ストーリーは原作と違うところも多々あるが、映画の尺にうまくまとめられていて違和感もない。
むしろ映画で知った人が漫画を読むとさらにこの作品を楽しめるんじゃないかなと思った。

自分が泣けたシーンは2箇所あり、ひとつはコミティアのあとにうららが悔し涙を流しながらカツサンドを食べるシーン。
同人誌を作ってる時はそれとだけ向き合ってるし、だんだん出来上がっていく充実感や完成品を見た時の満足感で胸いっぱいになるけど、いざ他の人といっしょに並べるとなるとまわりのレベルの高さに怖気づく気持ちはよくわかる。
こんな絵…と思う反面、それでも売れるイメージを持っていたからこそ現実のギャップと、それに負けてしまった自分が嫌で悔しくなっちゃったのかも。

もうひとつは雪さんがコメダ先生に「(この漫画を)描いてくれてありがとう」とサイン会で伝えたシーン。
創作してる側の気持ちで見てて、作ったことに感謝してもらえるなんてこんなに嬉しいことはないだとうな、と。
自分がいろいろと行き詰まってるからこそ涙が出た。

世の中にはまだ視野が狭く判断力の弱い若者を食い物にする悪い大人がいて、そのせいでなかなか年齢差の友情を育むのは難しい。
けど、この雪さんとうららのように年の差関係なく相手に敬意や思いやりを持って接することができるなら友達になれそう。

やりたいことをやらないままにするのも、年だからと諦めるのもどっちももったいないことだ。
一度切りの人生なのだから自分の好きに生きたい。
そんな前向きなメッセージを受け取った気がする。
ゆう

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