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ハケンアニメ!のKKのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
3.9
完成披露試写会に参加させて頂きました。


一言で表すと、"美しい作品"でした。吉岡里帆さん演じる主人公の齋藤瞳は、明確なビジョンを貫き通す芯の強さがある人物。彼女が憧れるのは"天才"アニメ映画監督の王子千晴。この2人には共通点がある。それは"ズレ"を持っている事だ。2人とも残酷な世界の煽りを受けて生きてきた中で自分の"世界像"を確立したのだ。昨今のアニメ戦国時代の中で、アニメーター渾身の作品がどれだけ受け入れられるかは未知数。自身の"ズレ"と世間の評価を一致させるのは至難の業。大衆ウケとこだわりを両存させることが如何に難しいかを熟知するプロデューサーの行城は個人的に1番好きなキャラだ(柄本佑さんの演技も最高)。天才と凡才は紙一重。一発当てた王子でさえも、一発当てたが故に自分の"ズレ"がまた世間に受け入れられるかどうかのプレッシャーに苦悩する。この作品のキャラクターはひたすら苦悩するのだが、彼らは苦悩に抗う術として作品に対する情熱を持っている。監督・プロデューサー・声優・スタッフ一同の全員が十人十色の情熱を持っている。その情熱を一束に纏める監督の立場は相当難しいだろう。ただ、その壁を乗り越えて一束に纏め上げた瞬間には素晴らしいものが待っている。それだけにラストシーンの全員野球ならぬ"全員アニメ"の描写には目頭が熱くなり、また頑張ってみようと思えた。アニメが1クールに50本以上ある時代。たった一つの作品にそれぞれの情熱をもった数百人が参加しているという事実を再確認出来た映画。この映画もまた、数百人が参加して一つの形になっている。今までは何気なく眺めていたエンドロールが美しく映った。アニメへの底知れない情熱が誰かの心に強く響いたなら、それは立派な"ハケンアニメ"だ。


キャストの皆さん素晴らしい演技でした✨
このような貴重な機会を頂きありがとうございましたm(_ _)m
KK

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