とむ

ハケンアニメ!のとむのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
2.0
Filmarks試写に当選したので、せっかくならということでの鑑賞。
ところで本編とは関係ないんだけど、舞台挨拶って映画終わった後にするもんなんじゃないの?
さっさと本編見せてほしいのに出演者の内輪ノリダラダラ見せられて結構苦痛でした。


招かれておいてアレだけど、最初に率直な結論。
「古き悪きダメな邦画作品を見た」
につきるなーと。

冗長な編集。
定型の展開。
よくみる芝居。
キレの悪い劇伴。
特に意味のない長回し。
ありがちなクライマックス…。
「いつもの」つまんない映画フォーマットです。
それに日本のアニメ業界をテーマにして組み込んでおけば取り敢えず客入り見込めるかなってプロデューサー陣の魂胆見え見えで鼻白むのなんの。

言ったら、アニメをテーマにした「バクマン。」みたいな展開にもできたはずなのに、
もう兎にも角にも悍ましくテンポが悪い。
しかもそこで描かれてることが大して重要じゃないシーンだったりするからタチが悪い。
他にもっと掘り下げるシーンあったでしょ。

例えば、市役所の担当者が「リア充」って言葉を誤解してることを指摘するシーンとか必要あります?
担当者が放送見て泣くシーンとか、
リデルライトのPが頭下げにいくシーンとかのセリフに意味を持たせたかったんでしょうけど、アニメーター役の女性が「こいつはどうせリア充だから私たちの世界(アニメ)のことなんてわからない」って思ってたことが分かれば、
その後に考えが反転する展開にもセリフで説明せずに展開を示唆できたのに、そういう無駄な展開が多い。

なんとなく役所の彼とアニメーターの彼女が結ばれる展開にしたかったんだろうけど、
その辺も写真一枚でフワッとみせるだけで中途半端だし、展開に責任持てないなら無駄なシーン加えるなよと。

他にも途中まで全然つっけんどんだったスタッフがラストの主人公の暴走で「何故か」やたら協力的になった部分の掘り下げとかさ。
流れとしては、吉岡里帆が声優の娘と打ち解け後くらいにスタッフとの距離感を覚えて、
「数値で言って」の人にちゃんと細かい数字を伝えてたり、色の人にカラーフィルムを用いて説明するくだりがあってからの「最終話作り直したいです」とかならまだ腑に落ちる。


あと、監督(この映画自体の)の技量のなさも問題だと思う。
吉岡里帆が転んだ時に散らばったカバンの中身がやたら整然と並んでたりとか、
アイドル声優に理詰めしてる吉岡里帆があのシーンだけやたらサイコパスだったりとか
(ていうか吉岡里帆のキャラクターが感情移入できないくらい嫌なやつなんですよね、特に前半)、
エキストラの子供たちがTHE・大人が想像する子供な芝居に辟易したりとか、
「それっぽくなればいーや」って意識の低さに腹が立った。

監督同士の対談?に来た観客が吉岡里帆にだけやたら塩対応で、ヘラヘラしてる感じとかホントムカつく。
冷静に考えて、いくら新人監督だからって拍手少なくしたり、発言に失笑したり、現実の観客があんな贔屓目に見るわけねーだろ。
「それっぽいシーン」をテキトーに描いた結果こうなりましたって感じ。

ラストの結婚云々の会話とかもいらんだろ。
何でこういう映画って恋愛要素を無理矢理にでも入れたがんの?


あとは中村倫也が明らかにDeath NoteのLを意識した服装で、かつ前述したバクマン。の新妻エイジっぽいコンテの書き方してたりとか、
引用してくる対象が浅い…。
「人がゴミの様だ」「オヤジにもぶたれたことないのに」みたいな、もはやオタクでも使わねーよって寒々しいスラングとか悪い意味で鳥肌でしかないんでホントやめてください。
アニメ界隈の人間がアニメしか見てないと思ってやがる。


それと、これは王子というキャラに対しての脚本的な苦言になるけど、
実は王子が沖縄に行くほどの豪胆さを持った自信家とかではなく、近場のビジホに逃げ込んで缶詰になる様な小心者だったって言うのがわかるシーンを入れるのはどう考えても中盤以降でしょう。
主人公と対比して神様みたいな存在なのかと思いきや…っていうのが途中で明かされるって展開じゃないと「あ、実はこの人も人間だったのにプレッシャーを押し退けて必死に頑張ってたんだ」っていうインパクトがないじゃないですか。
原作がどうだか知らんけど、映画と小説じゃ表現の仕方が違うんだから、そこはむしろ積極的に脚色しなさいよと。

そんな感じで、一時が万事展開が行き当たりばったりだから、盛り上がりどころが散りすぎてずーーーっと平行線。
このストーリーのどこで面白いと思えばいいの?


強いて良かったところを挙げるとしたら、
一番の肝である劇中アニメは、実際のアニメーション会社とのスケジュールのやりくりを実現するために7年かけたというだけあって流石に良かったです。
2作品ともちゃんとストーリーが面白かったし、劇中で描かれていない内容が(良い意味で)想像できるのもよかった。まどマギやぼくらのみたいな。
絵がちょっと芋っぽいのも、まぁ電脳コイルとかを踏まえれば全然アリだと思いました。

特にリデルライトのクライマックスはめちゃくちゃ良かったです。
「お前ら!私たちが死ねば良いと思ってただろ!」って、おそらく劇中世界の王子の作風をわかった気になってた視聴者に対するメタ台詞みたいなのはリアルのアニメであったらかなりグッときたと思います。

ただめちゃくちゃ意地悪なこと言うと、アレはおそらく原作でもある台詞でしょうし、
ビジュアル面においても劇中アニメを作ってくれたリアル世界のアニメスタッフのチカラなので…


あと、事前の舞台挨拶で吉岡里帆が「エンドロールにすごい仕掛けがあります!」ってスタッフから言わされてたので、どんな工夫が凝らされてるのかと思えば…
別にあえて口に出して言うほどか?
ああいう製作者サイドから「ここ!ここみて!ここ頑張ったの!ここ、ここ!」ってアピールするのマジでダサいからやめた方が良いっすよ。


あとこれは完全に重箱の隅を突くようなレベルのケチつけだけど、
主人公の好きなものがコージーコーナーのエクレアってのがあんま気に食わなかった。
あれだけ捻くれた主人公なんだからもっと捻くれた、場末の和菓子屋で売ってる大福が好物とかそのレベルにしといて欲しかった。
その方が柄本佑が差し入れ入れるシーンで「え!自分しか知らないような和菓子を探りあてるくらい自分のこと知ってくれてたのか!」って驚きからの「よく見たら苺大福じゃねーか!」みたいな描き方もできたのに。


なんか、感想書けば書くほどイライラしてきたのでこの辺で留めときます。
とりあえず、制作者陣にアニメ愛が一切ないのだけはよーーーく伝わりました。
「SHIROBAKO」製作スタッフの爪の垢でも煎じて飲ませてもらったらいい。

中村倫也が劇中で「暗い部屋でオナニーしてた奴に届けば良い」みたいなセリフ言ってたけど、
この映画の製作者陣はそういう「暗い部屋でオナニーしてアニメ見てブヒってるいい歳して子供部屋おじさんから脱却しようともしない今すぐ焼却処分されるべきキモヲタだけど、どうしようもないほどアニメが好き」な人たちのことは素直にキモいと思ってると思うよ。


とりあえず、これから公開日までの数日間は中村倫也ファンの皆様のお陰様で暫くは高評価が続くと思いますが、アニメファンや映画好きが見る価値はないです。「そういう映画」です。ヨロシクゥ!
とむ

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