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ハケンアニメ!のinotomoのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
3.8
あるアニメ作品に出会い影響を受け、公務員の道を捨ててアニメ業界に足を踏み入れた瞳。それから7年が経ち、連続アニメの監督を任されるまでになるが、アニメ制作の産みの苦しみを味わいながら、プロデューサーの行城のおかげで、やりたくもない宣伝活動や取材に駆り出され、ストレスが募る。おまけに、瞳の作品が放送される同じ時間枠に、かつて瞳の人生を大きく変えたアニメ作品を作った、天才と呼ばれる監督、王子千晴の作品が放送されることになった。より人々の心を捉えて「覇権」をとるのはどちらの作品になるのか…

今年度の日本アカデミー賞の優秀作品が先日発表され、複数部門で受賞しているこの作品。日本のアニメーションは、ジャパニメーションと言われるくらい、世界的にも人気があり、クオリティが高いけれど、その裏側を見せてくれるお仕事映画としてよく出来ているのはもちろん、何か目標を持ってそれに向かってがむしゃらに進んでいく人達の姿と思いがとても熱くて、青春映画と言えるほどのエモーショナルな展開が心を打つ。安易に恋愛とかを描いてないとこも良いし、アニメ好きなら、思わずニヤリとするセリフがあったり、人気声優が出ているのもナイス。単純に瞳の作品と王子の作品の代決を描いているのではなく、それぞれの作品のチームの様子を描いていて、群像劇の趣きもあり、そこが良かった。

主人公の瞳を演じていた吉岡里帆。この人の演技をちゃんと見るのが初めてだったけど、ノーメイクで髪を振り乱しているその姿は、瞳のキャラクターにピッタリだったし、違和感のない自然な演技でとても良かった。もちろんアカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞。クールな態度で何を考えているかわからないけど、実は内に熱いものを秘めている、行城役の柄本佑も良かった。

この作品、興行収入的には、「シン・ウルトラマン」の陰に隠れてしまったのかな。日本アカデミー賞は、毎年文句言いながら、結局いつも注目して見ちゃうんだけど、こういった作品が評価されるのは、ちょっと嬉しい。
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