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ハケンアニメ!のますのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
4.3
そうそうそうそうこういう王道お仕事ものが見たかったんだよ〜!!!!!!!!
今クリエイターでいることをとても誇らしいと思えたし、一緒に働いてくれている人達に対して自然と感謝したくなる。そういう映画だった。もっと見られてほしい。

まず物語の構造が上手い。「新人監督vs天才監督」という漫画的でちょっとリアリティがない設定(嘘)を土台としたことで、アニメ作りを多面的に見せること+スタンスが違う2組の「監督とプロデューサー」とそれを取り巻く人々の人間ドラマをを無理なく見せることに成功している。「見せたいもののためにひとつ大きな嘘をつく」の見本みたいだなと思った。

次に映画としての構成が上手い。複数人のキャラクターの内面を描きながらも話がブレていかない。これは「そのシーンで見せたいもの」をちゃんと考えて計算しているからなんだろうな。あまりにストレスなく展開していくので、ただただほえ〜すげ〜となってしまった。吉野耕平監督と脚本の政池さん覚えました。

一方で粗いところ滑ってるところもかなりある(有名なアニメセリフの引用や、ツイッターの表現など、うーん?と思うところがあった。多分あまりアニメを見ない人も「あ!知ってる!」と引き込むためのギミックなのだが。あとサバクもリデルもどう考えてもさすがに深夜アニメでは?5時の子供向けじゃないよな!?そんなぼくらのみたいな内容で玩具売れんやろ!ていうかサバクのタイトルダサいな!と思ってしまった)のだけど、それを補って余りあるほど物作りバトルが良く、アニメとアニメを作る人達、アニメが好きな人達への愛情と情熱あふれる作品だった。

そして何はなくとも柄本佑演じるチーフプロデューサー行城さんを見てほしい。格好良くてズルすぎる!

以下ネタバレ有り。









個人的に一番刺さったのは主人公瞳が作ったアニメの1話をお客さん達がパブリックビューイングするシーン。
不安に駆られた瞳が女子トイレにこもるのを見て、必死で作り上げたものを初めてお客さん達に見てもらうその時の恐怖をリアルに思い出した。誰にも刺さらなかったらと考え出すと吐き気がするし体温は下がるしリリース直後はエゴサをすることもできない。気持ちわかるぞ瞳〜!(無論刺さる刺さらないは受け手次第なのだが、そう理解しつつも心は見てくれる人全員(最低でも届けたいと思っている相手)に刺したいと思ってしまうので結果がわかるまでのストレスがすごい!※これは自分語りです。)
このシーンで涙が出るほど特攻が乗ったので0.5点くらい加点。劇中アニメも逃げずにしっかり見せ切ったのがよかった(リデルの最終回作画はもっともっとキレてたらより良かったな)。あとあと「リア充」のやりとりの下りもよかった。神作画ちゃんこと小野花梨さんがとてもかわいいし工藤阿須加さんの存在感もよかった。今回の役で吉岡里帆さんも好きになった。というか関わってる人全員好きになっちゃう。尾野真千子の「武器をくれ」のシーンもすごくいい。いいところが尽きぬな…。

最近やや仕事に慣れて気が緩みがちになっていたけれど、気合を入れ直して刺しにいこう。
ます

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