Ginny

ハケンアニメ!のGinnyのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
4.3
自分語り。

もう辻村深月作品のメディアミックスを恐れなくて良いんだと思えて泣けた。

2008年、『子どもたちは夜と遊ぶ』の文庫版のカバーに惹かれてジャケ買いして一気に辻村作品にハマった。単純に面白くて好きになったということではなく、志望していない学部に入部し、迷っていた私の一筋の光となった。私は、直木賞を受賞した『鍵のない夢を見る』までの作品全てをまとめた辻村深月論を卒論に書いた。
辻村ファンなら皆さんご存知の通り、『鍵のない夢を見る』はその当時は辻村深月らしくないものでファンの心は複雑だった。でも、その直後の『島は僕らと』から、変わってないよと読者に伝えるかのような作風もありながら刊行するたびに新しい一面を見せ楽しませてくれ、本屋大賞まで受賞し、第一線で活躍し続け、直木賞受賞の存在の意味、なんでも好きなものが書けるようになるよ、ということの理解を感じて必要な歩みだったのだと理解する。

『Another side of 辻村深月』は最新刊だけどいつものフィクションではなくタイトル通り辻村深月自身に迫る内容。これまでのインタビューや対談がまとめられ、論考やメッセージが寄せられている。
読んで、当たり前のことなのに気付いたのが辻村深月作品ってこんなに愛されてたんだ、と。活躍し続けてきたのは辻村さんが書く文章が面白いからだけでなくて周りの人を巻き込み愛されサポートを受け、人の繋がりが増えていって多彩な作品が生み出され続けてきたんだなと。

それをこの映画を見て、改めて感じた。
当初のメディアミックス、特に実写は酷いものが多かったように個人的には感じていた。絶対に良い作品なのに、なんでこんな風に実写化するとなるの?と悲しくなることがあり見るのをやめた。

でも、映画『朝が来る』を見て辻村作品の実写の精度の高さに感心して、これを見て。その考えは塗り替えられた気持ち。
もう、恐れなくていいんだなー。
もしかしたら、この作品のように辻村さんもはじめはメディアミックス化の話の中で軽視されていたのかもしれない。原作の理解もなく、消費されるような。
でも今は違う、多くの読者が映画やアニメ制作の現場にいて、辻村作品の良さを理解してくれているからこそ良いメディアミックスが出来上がるのかなと思った。

『ハケンアニメ!』は大好きで、辻村深月先生10周年記念サイン会に持っていってサインしてもらった本。
王子監督はイメージと違うし、CLAMP先生のイラストと他の人も違うと思うところもあるけれど、総じて好感持てる映画でよかった。特に吉岡里帆さんが良かった。あんなに元が可愛いのに野暮ったくなれるんだということに感心。

『レジェンドアニメ!』最近読んでやっぱり良かったので『ハケンアニメ!』も久しぶりに読み返してみようかな。

怯えなくて良いかもと思いつつ、木村浅葱だけは実写化しないでほしいと思ってしまう。彼だけは特別。
Ginny

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