湯っ子

ふたりの女、ひとつの宿命の湯っ子のレビュー・感想・評価

ふたりの女、ひとつの宿命(1980年製作の映画)
3.9
「前も後も霧。後には罪、前には夢」
繰り返されるイレーンの詩。

画面の真ん中にふたりの女。手前には花嫁のヘッドドレス、奥にはゆりかご。愛し合ったことは罪なのか、生まれ落ちた赤子に夢を託すのか。どちらも霧に包まれている。
哀愁たっぷりのテーマ曲もお話もまるで昼メロなのに、ドライな語り口なのがいい。

おぼこビッチなユリのイメージが強かった常連キャストのリリ・モノリには、ユリの時の無邪気な愛らしさはもうないが、その太々しさは変わらず。不妊に悩み、金で赤ん坊を買おうとする裕福なスィルヴィアを演じる。
若きイザベル・ユペールが演じるのは清貧のイレーン。白い毛皮に包まれた姿はまるで白無垢を着ているようで、まだ何色にも染まってない。
「男の顔は履歴書、女の顔は請求書」という言葉が昭和の時代、まことしやかに語られたようだけど、女の顔にも履歴書と請求書がある。とうぜん男の顔にも。
湯っ子

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