デッカード

冬薔薇のデッカードのレビュー・感想・評価

冬薔薇(2022年製作の映画)
3.0
口先で大きなことを言うが中身はない、他人に金をせびり不良仲間とつるんでその日暮らしをする青年。
親とも互いに向き合うこともできず、他人に近づくほどに距離を置かれていく。
簡単に人生を変えられない過去という呪縛。

主演の伊藤健太郎本人の半生も反映させた脚本らしいが、虚勢を張って生きていても誰からも必要とされない若者の虚しさが寂しく描かれている。

とぼけた味の石橋蓮司の一つひとつの言葉が青年の将来の姿を想像させ悲哀に満ちていて重い。
名演。

久々に観た阪本順治監督作品はやはり硬質な味わいだった。

冬に咲く薔薇の強さとは相反する人間の弱さ。
過去という自分が敷いてしまった人生のレールから逃れられない人たちを悲しげな視線で見つめた阪本監督らしい映画。

キネマ旬報2022ベストテン 日本映画5位
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