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冬薔薇のmofaのネタバレレビュー・内容・結末

冬薔薇(2022年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます


「冬薔薇」と書いて、「ふゆそうび」と読むらしいです。
冬に咲く薔薇の事らしくて。
 ひき逃げで活動休止していた伊藤健太郎さんの復帰作になります。
元から好きでも嫌いでも・・・というより作品も観てなかったんですけど、
阪本順治監督が起用したというので、
興味が湧いてね~。
しかも、クズの役だっていうから・・・・。
(今、確認したら幾つか観てた・・・
でも、あんまり記憶になかった)

 なんというか、不思議な作品でした。

完全なノワールでもなく、どちらかといえば、軽いのに、
こうズッシリと重い余韻がある。
 それは、子育てにおいてもだし、
人間が変われるかどうか・・
という点においても。

 淳と取り巻く若者たちの演技
(子役も含め)が、
何だか下手くそでね・・・
でも、その下手さが、その若者たちの偽りの生活みたいな感じが
してくるんですよね。
 毎日をきちんと生きていない感じ。
特に、チンピラのリーダー(永山)も、偉そうにしているワリに、
しょーもない男に従うしかなかったり。
 それでも、精一杯いきがってる・・・
その痛々しさが、演技のぎこちなさに合わさっているんですよね。

その反面、父親(小林薫)を主軸とする船乗りさん・妻(余貴美子)の
演技は、申し分なくて。
 正直、この船乗りさんたちの話を映画にしたらいいのに!!って
思うくらい。
 自分をさらけだして、背伸びをしない人生を送ってる。
 
息子を取り巻く、痛々しい世界と、
父親を取り巻く、平凡な世界と。
この違いもまた、演技の違いのようで、その対比が非常に面白い。

伊藤健太郎さんは、なかなか良かったです。
 寂しさや認められたい気持ち。
そういったものを、埋められないまま大人になってしまった。
 変わりたいと思っても、結局、安易なんだよね。
自分で努力をしないまま、良い事ばかりを描いて、
夢だけ大きい。
 
私は「人は変われる」という題材が好きだけど、
こういう映画を観ると、「変われないよね」と思ってしまう。

でも、それと同じくらい、子育ては何歳からでも
やりなおしはきく・・・とも思っている。
 この両親が、長男を失った事で、次男を放置してしまった・・・という
自覚があるなら、今からでも、きちんと向き合うべきじゃないかと
思うんだよね。
 人の子供をみて、「淳があんな息子だったらいいのに・・」と
思うんじゃなくて、今の息子を認めるべきなんだよね。

・・・・この小林薫さんが本当にうまくてね・・・・。
不器用だとか、オヤジはそんなモン・・・を言い訳にして、
向き合わない感じが、滲み出てる。
 そして、母親も、
淳のいい話だけを、すっかり信じて、喜んでしまう所とか、
本当に、そういう所あるよね、母親って・・・と共感してしまった。

もちろん、そうしても変わらない人もいるんだろうけど、
淳から滲み出る、親への慕情が、
何だか切なくもありました。

しかし、冬薔薇のタイトルとは・・・。
皮肉なんだろうか。
母親が、他県でしっかりと働いているだろう息子を想いながら、
薔薇に、「また冬にね」と話しかけるのが、悲しい。
近いウチに、事件起こしたとか何とかで、
再び、地獄に落とされるんだろうな・・・・。
 こうして、何度も失望して、信じて・・・。
これを繰り返すのが、母親のサガだよね~。

でも、淳もまだまだ若いもんね。
これからの人生は、分からない。

 それはそうと、真木蔵人さんを久しぶりに観たら、
マイク真木さんでした(笑)
やっぱり親子なんだね~。
昔は、演技が下手くそで、おいおいって思ったけど、
なかなか良かったです。

 伊藤健太郎さん、これを機に、演技の幅を広げていって欲しいですね。
(そういえば、永山絢斗さんも何かで捕まってたな・・・)
東出昌大さん同様、応援してます。
(色々、叩かれてるけど、東出昌大さんのファンなんですよね)
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