うみぼうず

シティ・オブ・ジョイ 4Kデジタル・リマスター版のうみぼうずのレビュー・感想・評価

4.5
とても良い映画。絶望と希望の狭間での足掻きが描かれる。人生の選択肢は「逃げる」「傍観する」「飛び込む」のどれか、というセリフがとても心に残る。

映画の印象は何よりもインドが濃い!今まで観た映画や読んだ本見た写真などの中で、最もインドの空気を感じられるもの。(インド行ったことないけど) インドの、しかもスラムでの暮らしは想像以上で、時代設計が製作当時としてもかなり貧困さが際立つ。
ストーリーやドラマ部分も大筋だけみれば医者の再起と貧困からの脱出など今でこそありがちなテーマではあるものの、インドのスラムである"歓喜の街"を通して見るからこその厚みがあり説得力や悲壮感、そしてカタルシスを感じる。シャンブーとマックスとのネックレスのくだりで感極まって泣きそうになるくらい、気付いたら没入していた。

恐らくセット組むなどせず街そのものでロケしているんだろうけど、洪水のシーンはどうやって撮っているのか…。大雨もたぶん本当の雨だろうし、ハンセン病や障害がある人たちもメイクではなく実際の人達なんだろうな、と思わせるリアリティがある。

雑多と言うか、混沌と言うか。多様性などと言う言葉では言い表せないごちゃごちゃ感。そして貧富の差。富める者と与えられる者とで立場が違う。大旦那のセリフは的を射ていて、壁であり守るものである。

何を提供できるか、何をもたらすかがとてもシビア。結婚においても持参金という形で財産を与え許可をもらうが、持参金不足は結婚もできない。Wikiだと持参金が足りないと結婚しても花嫁か冷酷な扱い受けたり自殺に追い込まれることもあるほどだそう。劇中ではハザリが家族のために娘のために痛々しい程懸命に働く悲壮な姿が描かれる。

違和感があるとすれば医者のマックスで、郷に入っては郷に従えが正しい訳では無いが、一時滞在にしては随分と首を突っ込んでくるなと。言うのは易し、行うは難し。これからずっと住み続けるハザリにとっては人生を左右することで、無責任な言動は迷惑でしかない。

実にアメリカ的で傲慢な考え方であると思う一方、首に重しを付けられた鳥・羊では搾取され続けるだけだと言うのも極端ではあるがまた真理。大旦那が健在であり続けたらハザリはまた違った選択をしただろうが、自分の意思主義権利の主張は必ずしも善なのだろうか?
そして解決手段の一つが今回は暴力だったが、若旦那アショカはやられっぱなしで終わるだろうか?面子を潰された報復がありそうで不穏さは残る。ただラストショットで初めて歓喜の街であることを感じられ、将来・現在への希望と受け取った。

ローランド・ジョフィ監督だと視聴後に知る。次は『 ミッション』観たいなぁ。4Kソフト化されるにあたって監督のロングインタビューなどが加えられているらしく、監督の想いや撮影技法についてなど語っているなら聞いてみたい。
音楽モリコーネだったみたいだけど、インドの喧騒が最も最適かつ印象的なBGMだったのは仕方なし。
うみぼうず

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