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RRRのCinemanのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.3
・内向きなナショナリズムに陥らない、国際感覚のある作品
それがナートゥのシーンによく凝縮されてる。英国人とインド人の分断、支配と抵抗に単純化せず、自分たちのパワーで英国人まで自分たちの踊りに巻き込んでいく。
・インドは、インドの物語の語り方や感情世界をしっかり見つめつつアップデートしてる。昔っぽい元祖英雄譚の語り口も、ここまで極めればこんなに高いレベルの作品に。
・ストーリーがよく練られてる!
1発の銃弾の重み、男と女、部族とエリート...最後は対抗ではなく包括へ向かう姿勢..,今の時代にこそ、よくぞこれを描いた。視点の懐の深さ。
・西洋映画なら、2人が打倒英国に立ち上がるも、問題は時代の構造であるがゆえに、その2人の行動が直接何かを変えられることはない...という運びになりそうだけど、あえて総督打倒に漕ぎ着ける、それをあっけらかんとやるバランス感覚の良さ。
かえって、深刻に描く西洋映画的転換よりもリアリティや現実感を感じる。
・アクションの生の躍動感。良し悪しではないが、ハリウッドアクションでは慎重に怪我を避けて撮られているアクションが、怪我をも厭わず撮っているような感じというか(実際にどうかは勿論わからないけど..)初期のジャッキー・チェンのような。
・例えば、群衆の顔に、本当に集めてきた生身の群衆でしか撮れない、個々人の異なる感情が見える厚み。最近の大作で、群衆シーンをCGで済ます意味のなさ、本末転倒を突きつける。
・エンドロールもそっちのけで、NGですらなく、そのためにがっつり踊るシーン。余韻をこちらに「押し付けない」
エンドロールまでが映画です、ということもあるけど、それって場合によっては、“作る側がえらい”主義で、勿体ぶった態度でもあるかも。インド映画はどこまでも、観客中心主義。座ってて欲しかったら、座ってるような映像を見せつける。実際、長時間上映なのに誰もラストまで席を立たなかった。
・近年も映画賞では毎年のように、第一次大戦舞台のイギリス映画が、フランス戦線での若きイギリス人の悲劇を描いているが、全く同じ時期にインドでは、インド人の青年たちがイギリス統治の元でこういう目にあっていると...
絶対的に被害者の立場などない。誰かが誰かを害し、また誰かが誰かを害することの連続
・セデック・バレも彷彿とさせた。日本の統治機構で、日本側で原住民を統治せざるを得なかった原住民の警官...
帝国のやり方は変わらない..というか大日本帝国が真似た。
・ビームの彼女のイギリス人女性・ジェニーの描き方が、秀逸。自主性はなくて、特に人格もない空っぽ美女。インド映画での彼女には違和感覚えるが、考えたら、イギリス映画などで白人の中で唯一の有色人種女性が同じように描かれても、そんなに違和感感じなかっただろう。反転させただけなのに。彼女の存在が、今までの映画史の一部にあった搾取性を感じさせる。

[当時の背景]
https://www.y-history.net/appendix/wh1503-081.html

・1919-ガンディーの非暴力・不服従運動
この頃の抵抗運動で、中村屋に流れ着いた人も
・ガンディーは失敗したが、影響を与えたことで、上流階級中心の英国統治は前提とした上での議会参加要求→中下層も入れての、全面の自由要求
⇔RRRの身分違いの団結のテーマの背景
・ちなみに、ムスリムとヒンドゥーの分裂を狙う分断統治も英国によって幾度となく試みられた。

❓近代化 現代化していく中で、インド人の身体性はどうやって保たれたのだろう。日本とかだと、舞踊や体育でも近代的 西洋的身体に飼い慣らされて行ったわけだけど..
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