angie2023

RRRのangie2023のレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
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上映が終わって、余韻もない中、劇場の明かりがつく。すると、場内の雰囲気がパッと緩んだ。暗闇の中で、みな我慢していた感情が、ここで爆発したようだった。高い声で話すもの、笑うもの、頷き合うもの… 緩んだ雰囲気が、とっても嬉しかった。
この映画は高度に政治的で、やりすぎとも言えるし、言い換えれば非常にB級度の高い作品でもあるが、この劇場のゆるみに救われた。そう、まず第一に、この映画は、娯楽性の高いものである。だからこそ、政治的でピリつくはずのテーマも、大きく揺るいでしまう。これは、もちろん同時に問題点もあり、一概に称賛できないのは確かなところであるが、私は上映終わりの、この緩んだ雰囲気に確信した。この映画はそんなもんじゃない、そういう次元を超えて、わたしたちを興奮のなかへと誘ってしまう、魔法のような体験を与えてくれるものだった。

超人的な体力と身体を発揮する二人でなければ、この映画は本当に「よくない」作品であることは確かだ。超人性が、この映画をまるでファンタジックなものへと昇華させてしまう。描いていることは、絶対に無視ができない史実そのものであるのだが、あまりにも過激、一方的な視点は、否定はできないものの、私は称賛できない。(なぜなら、ナショナリズムを煽る危険性があるからだ)

しかし、この二人の力により、そんな議論はどうでも良くなってしまう。二人のパワー炸裂にフォーカスしきった作品であるからだ。
例えばこれが、本来の目的であるように、村人が武器を持ち、みんなで攻撃をしたり、市民が暴動をおこして、転覆を描いたりしたら、全く変わってくる。この作品は、それはしない。あくまでも、強靭すぎる二人の男にフォーカスして、存分にパワーを炸裂させて、史実を曖昧なものとする。空中を飛び回り、考えられないほどの力を発揮し、動物さえ携えて、火と水を爆発させる… これらの存分なアクションシーンを堪能しているうちに、それが「植民地支配」への抵抗であることを、私はすっかり忘れてしまうのだ。もちろん、忘れることには別の問題がある。だが、このテーマを、インド側から描くこと、イギリスを絶対的な悪として描き切ってしまうことは、非常に政治的であるが、その政治性をマイルドにする役割が、超人的なアクションシーンには含まれているのだ。

歴史修正主義者がみたら、なんていうことだろうと口を覆うか?いや、この映画こそ、ある意味「歴史修正」なのだ。あったかもしれない過去を、ファンタジックにエネルギッシュに描き、事実と混同させていく。それも、恐れや配慮なしで!!

友情、裏切り、そして和解… ふたりの男たちは、非常にナルシズムのなかにあった。身体は筋骨隆々だが、女性や子供に対しての、マッチョ=「男らしさ」を働かせることがないのが、好感度を持てる正体かもしれない。子どもという、明確な人を助けるとか救うとか、そういう目的はあるものの、やはりアクションシーンの、ナルシズムに満ちた描き方が、その目的すら忘れさせてしまうのだ。
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