春とヒコーキ土岡哲朗

RRRの春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

RRR(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

巧みに、パワー全開の原体験を見せられている。

またパワーマックスで「これがインド映画か」と楽しませてくれた。『バーフバリ』の監督の映画が、日本でも前作以上に多くの人に広まって話題になっている。見たら、あのノリとパワーのままで貫いていて最高だった。前作が弓矢中心のアクションだったのに対して、今回は時代設定的に、銃や車など前作にはなかった文明の利器が登場。そのかっこよさに加え、クライマックスで弓矢が出てきたときは、やっぱり見たかったので「バーフバリだ!」と嬉しくなった。敵が屋上に鎮座していると、城や砦の軍事力・財力も感じるし、物理的な場所の高さで敵の強大さを感じて、そいつを打ち負かしたときの快感へのふり幅になる。そんな『バーフバリ』との反復も使いながら、次回作もおそらく今回以上の製作規模でインド映画のパワーをかますのだろうと思うとワクワクする。

外連味ありまくりのかっこよさ。「火」と「水」のパートが、ちょっと長かった。でも、「水」の最後でようやく2人の主人公ビームとラーマが出会い、2人で子供を救うところでスイッチが入る。お互いにロープを自分の体に結んで、左右に分かれて橋からダイブして子供を助ける図は、バカげている。でも、それを「おれはこれがカッコいいと思う」と監督のごり押しで見せられたとき、「バカげているのはもうどうでもいいぜ」とこっちも思わされる。その場面が終わって「RRR」とタイトルが出たときは、今までの「火」や「水」がフリになって、「ついにタイトルが来た!始まる!」と盛り上がった。ムチでの拷問中に、悪者の夫人が急に「これを使いなさい」とトゲつきのムチを出したシーンは、映画館で笑ってる人もいたくらいめちゃくちゃ不自然で脚本の都合すぎるんだけど、それでも面白い方向に話を持って行くためならいいよと思ってしまう。そこはロバート・ロドリゲス監督にも似てるな思う。屋敷につっこんでたくさんの動物を放つシーンは、それが攻撃として効率的なのか意味が分からないんだけど、力が知性を追い越していて笑いながらも痛快だった。

友情と使命が相反したときの葛藤。村の少女を取り戻すために植民者に戦いを挑みに来たビーム。植民者側の警察官であるラーマ。しかしラーマの抱える使命とは、警察官のことではなく、実は植民者の言いなりになっている風を装って植民者を倒すために故郷に武器を送ることだった。その正義のために、ビームと敵対してでも警察の中で出世しなければいけない。思った以上に簡単にクリアできないジレンマであった。ビームはラーマのことを、友情より権力をとった裏切り者と思ったまま、少女奪還に向かう。ビームが少女を取り返したところで、二人の友情に亀裂が入ったまま映画が終わるのだと思った。悲しすぎるけれど、過酷な話としてはかっこいい。しかし、このあと真実を知ったビームが、ラーマを助けに行く展開に。丸く収めるためではなく、より盛り上がり、友情ボンバーで真の敵を蹴散らしていく。想像を超えて面白い方に転んだ。
友情ボンバー無双。2人で敵に挑むクライマックスに突入してからは、ノンストップ。ただ、暴力の否定のような問題提起をしたにも関わらず、復讐を肯定するような形で終わったのは、道徳的には良くなく見えた。

好きなシーン3選。

その1.
ラーマの過去編では、ラーマの父が、妻を殺された瞬間も悲しみを押し殺して復讐のために弾丸の装填を息子に指示する。辛くても目的のために戦いを選ぶ父の姿を目の当たりにし、それを薄情だと思わずに、瞬時に父の信念を理解して順応した少年ラーマ。親子両方の姿に震えた。

その2.
クライマックス、2人で肩車で戦い出したとき。ラーマが収監されて足が疲れ切っているからと言って、肩車=合体して強くなるっていうのが最高。

その3にして最高.
ナートゥを踊り始める前の、ラーマがお盆を蹴っ飛ばしてドラムにセットするところ。ナートゥのシーンが大人気だけど、その前のここが最高に燃えた。インド音楽を奏でるために、ドラムではなくただのお盆を叩く。それをバカにされた友のためにラーマがスマートかつ大胆にセッティングするところで、友情×キレ者×ルーツ爆発、と色々重なって一番テンションが上がった。