KnightsofOdessa

トラララのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

トラララ(2021年製作の映画)
4.0
[自分自身でないこと、自分自身であること] 80点

初ラリユー兄弟。48歳のホームレス歌手トラララが聖母を幻視してルルドまで会いに行く話。序盤はロードムービーなのかってくらい常に移動し続けているが、これは聖母ことヴィルジニーちゃんに言われた"あなた自身であってはならない"という言葉から派生したアイデンティティの放浪と結び付けられている。トラララはルルドで潜り込んだホテルで女将の死んだ息子パットと間違われ、パットの兄や元恋人たちとパットとして、或いはパットでないと気付かれながら交流を続ける。つまり、トラララはパットというアイデンティティを本人とは別に持ってしまうのだ。コロナ禍で撮影されたこともあって、街中でのゲリラ的な歌唱シーンでは、通りを歩く人々がマスクをしていて、トラララが歌い出すと露骨に嫌そうな顔をして脇に除けていくのだが、本作品におけるマスクの存在は"自分自身である"ことを示しているようで、基本的にトラララと交流した人々は自分自身を取り戻したかのようにマスクを外していく。予告編にもあったけどメラニー・ティエリーが青い土産物屋で歌い踊るシーンが好き。あと、メフィストフェレスみたいに走り回ってる悪ガキみたいなドゥニ・ラヴァンが可愛い。
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