マテ

ヘルドッグスのマテのネタバレレビュー・内容・結末

ヘルドッグス(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

「俺とこの女、どっちが大事なんだよ!」
おいおいお前マジか室岡、それを言っちゃうのかお前。自分が選ばれると確信してなきゃそんなこと言えないよ。惨めで哀れで愛おしいヤツだよお前は…。
出会った時の2人の笑顔が眩しくて、それゆえに別れが切なすぎる。でも室岡を殺した兼高が死のうとしたってことは、ある意味で兼高は室岡を選んだとも言えると思うよ。「生きている限り支援する家族がいる」と言っていた兼高が自ら死を選ぼうとしたのだから。一緒に生きてやることはできないが、一緒に死んでやることならできるっていうのも、激重な愛情ではあるよ。きっと兼高も室岡と過ごすのが楽しかったんだろうなぁ。兼高の物語だと思って観ていたけれど、2人の関係に着目して見返したら多分もっとエモいやつだ。原作読んでみたい。
あと台詞回しもたまらなく好みだった。迂遠な例え話とか、話し言葉とも書き言葉とも違う、少し崩した演劇っぽい日本語とか。「ああ」じゃなくて「うん」、「いいぞ」じゃなくて「いいよ」みたいなハードな兼高のソフトな言葉遣いも性癖に刺さる。めちゃくちゃ好き。岡田准一さんの信じられないほど素晴らしいビジュアル(マジでヤバい)と格闘力の高さ(強すぎる)も遺憾なく発揮されていて、真面目に最高な作品だった。ロッカーに詰められていたお坊さんがじわじわ来る。
こういう作品では、女性は性の対象として描かれてしまいがちだが、今作ではメインキャラの全ての女性が媚びへつらうことなく、信念があって目的があって気骨も行動力もあるひとりの人間として描かれているところもとても良かった。
マテ

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