ダイナ

ダイ・ハードのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

ダイ・ハード(1988年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

ビルを占拠した武装集団に立ち向かう1人の刑事の死闘を描いたアクション映画の大大大傑作!舞台となるナカトミ・プラザ、エレベーター通気口ダクトを駆け回り時には梯子を昇降しバンジーをして頻繁に移動しながら手に汗握るアクション・場面展開が最高に面白いです。バンジー後のビル内はもう屋内というより戦地のような、あの植物があって炎がメラメラ燃えている感じたまらないですね。武器現地調達に始まり、敵の名前を腕にメモしたりマシンガンをつっかえ棒にして降りたりと「持てる資源フル活用」のスピリットが特徴的。

汗だくでぼやく不運な巻き込まれ刑事ジョン・マクレーンのアクションのかっこよさ、そして家族や味方に対する情に見られる人間味溢れる哀愁がとても魅力的です。完全武装した集団vsほぼ丸腰(拳銃所持)という逆境の中トリックスターのように盤面をかき回し武装集団を脅かし外野を巻き込んでいく台風の目のようなマクレーンのエネルギッシュさ、そして相手がいようと1人だろうとぼやいてしまうジョークセンスはウィットに富んでいてとても魅力的な主人公です。相手の煽りに煽り返したり、ビル前でウロウロするパトカーに「スティービーワンダーが運転してるのか?」と苛立ったり、ダクト内の自分をオーブン内の冷凍食品に例えたりと状況に流されないその皮肉ったスタンスは面白く頼もしく映ります。警察内部の不謹慎な賭け事に「俺にオッズ賭けとけ」と言える所が好きです。

本作では字幕では訳されないニュアンスが原語にあります。前述のスティービーワンダーの件もその一つです。序盤「戦争には負けたがビジネスで勝つ」というタカギの台詞があります。この部分実際原語では「真珠湾攻撃に失敗したからカセットデッキで勝負した」という風にかなりブラックなジョークを飛ばしています。吹替だと「日本人は柔軟」という風にしか訳されていませんが、原語を踏まえるとその後のエリスがゲラゲラ笑うリアクションにも腑が落ちやすくなります。そういった字幕や吹替では排除された表現が原語にいくつかあり、字幕・吹替えの他に原語(≒英語字幕)の選択肢も気付かされる一作です。吹替えに関しては字幕の硬い表現が声優さん達の演技により流暢で砕けた印象がプラスされ、テロリストの不謹慎さやマクレーンのくたびれた雰囲気がグッと増し日本人に親和性のある耳触りで組み立てられていて素晴らしいです。吹替と字幕どちらにも魅力がありますが、2週目以降台詞を覚えてきたら原語(英語字幕)に挑戦してみるのもおすすめです。

知的で大胆な作戦を展開しか弱い演技で欺こうとする手札の多い大敵ハンスの狡猾さ、敵ながらとても魅力的です。Mrs.と呼ばれMiss.を強調する妻ジェネロ、「人を怒らせるのはあいつだけ」という言葉に信頼が隠れていて良いです。布石的な存在のアーガイルも良キャラです。(ぬいぐるみの視線を気にする所が面白い)孤独に闘うマクレーンの唯一の理解者としてサポートするパウエル巡査とマクレーンの掛け合いの安堵感は言うまでもなく、ラストでトラウマを克服する所はかなり琴線に触れますね。単独無双系において軽視されがちな周囲のキャラを魅力多寡に描いていて、かつロケーションやオブジェクトを上手く活用しダイナミックなアクションを映したブルース・ウィリスの名演冴える傑作です。
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