湯っ子

ドライビング・バニーの湯っ子のレビュー・感想・評価

ドライビング・バニー(2021年製作の映画)
4.2
原題「バニー・キングの正義」。
愛情深くて正義感が強いお茶目さん。衝動的で短絡的で、怒りのコントロールができない。コドモ向けのヒーローものの世界なら、「アツすぎるのがたまにキズ!」くらいですまされて、やりすぎた時にはクールで賢い相棒にたしなめてもらえるキャラクターだけど、バニーは現代に生きる貧しい中年女性で、現実は厳しい…そんな彼女が貫いた正義だった。

バニーと彼女の子供たちは、ワケあって別々に暮らしている。ふたりの子供たちがとてもかわいくて良い子なのが泣かせる。
6歳の誕生日を迎える女の子がもう天使みたい。この子はちょっと脚が悪いみたい、それには悲しい理由があるのかも……、
中学生くらいの、思春期反抗期まっさかりの男の子がまた…、妹を守らなきゃという気持ちと、ママを愛して心配するゆえに、ルールを破ったりなんでもやりすぎちゃうママに対するイライラしてしまう気持ちと、自分自身のアイデンティティやらコンプレックスやらで、この子にどれだけの負荷がかかっているのかと思うと……、切なくてやるせない。
この子たちを見ると、ふたりを引き取った里親に大切に育てられているのがわかるし、ふたりがバニーからの愛情もちゃんと感じているので、むしろバニーと一緒に暮らすよりもこの状態の方が良いのではと思えてしまう。この描き方はとてもシビアでフラットだ。

バニーの行動は全て、愛情や正義感から生まれていることなんだけど、社会的に認められる方法ではない。でも姪のトーニャにとっては、バニーはヒーローだったんだと思うし、バニーの子供たちにとっても、やっぱりママはヒーローなんだと思う。

バニーと子供たちをサポートする人々が、職務を粛々とかつユーモアをもっておこなう姿がまた良い。特に後半に登場する支援センターの所長の女性のふるまいが素晴らしい。「今ここですべきこと」を常に考えて行動している。バニーと対をなすキャラクターだ。

ジャケットと邦題のさわやかシスターフッドロードムービーなイメージとはちょっと違ったけど、観終わってから、じわじわと彼女たちのことを思い出して、いつまでも考えてしまうような映画だった。
湯っ子

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