しばわんこ

百花のしばわんこのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
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認知症になり記憶を失くしていく母親と、捨てられた過去を持つ息子の物語。
原作・脚本・監督は川村元気。母親役を原田美枝子、息子役を菅田将暉が演じています。

何というか感想の難しい映画でした。一言で感動する、泣ける、という映画ではないのですが、心に沁みるシーンも幾つかありました。

冒頭の認知症で場面が何度もループするシーン、突然過去の記憶が呼び起こされて現実との区別がつかなくなるシーンは、ぞっとするものがありました。同じく認知症の父親を描いたアンソニー・ホプキンスの映画「father」を思い出しました。

認知症の母親が雨の中突然行方不明になるシーンと、過去の息子が小さい頃雨の中迷子になるシーンが突然オーバーラップする。母親は記憶を混同して息子を懸命に探していたことが後になってわかる。
自分自身も子どもの頃よく迷子になったことがあるので、その頃、母親はどれだけ心配をしたのだろう、その頃のことをどのように記憶しているのだろうと考えたりもしました。

母親役の原田美枝子が、認知症の60代くらいの現在と30代くらい若い頃のどちらも演じています。息子役の菅田将暉も過去のわだかまりを持ちながらも、認知症になる母親を受け止め、自身も父親になる難しい役を演じています。
記憶を失くしていく母親と過去の失くしていた記憶を取り戻す息子。本当に切ない…。共演の二人の演技が素晴らしかったです。

映画の評価は賛否両論のようです。
映画を観る人の年齢によってもずいぶん見方が変わる映画だと思います。すっきり泣ける、というよりは少しモヤモヤした感じも残りました。いろいろ考えさせられたり、不安になったり…。
でも、それはそれでこの映画の良さではないかな、と僕は思いました。
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