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百花のkooのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
3.4
認知症で徐々に記憶を失っていく母と、母に捨てられた過去がある息子の物語。

う〜ん?公開前からかなり期待していただけに、ちょっと残念でした。
もっと親子の絆を描いたヒューマンドラマかと思っていました。

母親が息子をおいて不倫相手と駆け落ちした空白の1年の描写が長くて、その一方、どうして息子の元に戻ろうと思ったのか、その間残された息子はどのように過ごしていたのか、戻った後の親子関係はどうだったかの描写は一切ないので、親子のわだかまりのようなものは何となく感じても、母親の心情や息子が母親に抱いている感情をあまり汲み取ることができませんでした。

『半分の花火』の意味も、記憶が薄れていく中でも息子との幸せだった時間は覚えている母親の自分への愛情を知り、母親に愛された記憶を取り戻し、心が救われたのだろうと想像しますが、母親の行為には共感できないので、果たして、親子の楽しかった記憶の1つが思い出されただけで、息子の心は癒されるものなのか疑問が残りました。
「捨てられた記憶」をずっと背負ってきたうえに、母親の日記から自分を捨てた理由を知ってしまったのだからなおさらです。
むしろ、あのようなラストシーンの演出は、普通の親子関係だった方が胸に迫ると思います。

キャスト陣の演技はとても素晴らしかったです。
映像美とキャスト陣のおかげで、上質な作品っぽく仕上がっていたような気がします。

認知症は他人事ではないし、患った本人にとっても家族にとっても本当に辛い病だなと身につまされました。
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