ゆずきよ

百花のゆずきよのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
3.3
数ヶ月に1度訪れる正体不明の負のビッグウェーブ。
乗り越えるには1度極限まで精神を落とす必要が私にはあって、とんでもない鬱映画を観るか、めちゃくちゃ泣ける映画を観て持ち直します。
そのどちらの可能性も秘めていると思われる映画です。

物語は、アルツハイマー型認知症と診断された母と息子のお話です。
母役に原田美枝子、息子が菅田将暉、息子の妻に長澤まさみという布陣。
冒頭はピアノの旋律と一輪挿しの花瓶から。
全体的に暗く重苦しい雰囲気が漂っています。
時折挟まれる過去映像のフラッシュバック。
それが無くなる記憶と付合して切なくなりました。
スーパーでのシーンは認知症の進行を表していて本当に恐怖。
もちろん実際にどういう見え方をしているのかは、研究や想像の域を出ませんが良く表現されていると感じました。
病院の告知シーンもリアルで泣けます。
たべっこどうぶつ…。
ただ中盤から様子がおかしい。
母と子のお話かと思いきやもう一つ要素を乗せてきます。
確かにこれまでの映像からも違和感は感じていましたが、その理由があまりにもボヤッとしていて、真相がわかった後も疑問が大きく残る展開。
この時期に観たからかそう思うのか少し大袈裟とも言える震災の描写もいらなかったかな。
話が現代に戻ってからは、母子の関係性もこの映画と私との関係性も、少しわだかまりが残っていましたが時間は待っちゃくれません。
そこからは比較的時間軸も飛びあれよあれよという間にラストシーンへ。
キーワードである半分の花火に関しては結局泣きました。
いつも思うのですがどの様な絶景だとしてもどんな状況で誰と見るかが重要なんですよね。

前半と後半で大きく印象の異なる映画です。
私の感想としては前半面白い作り方、後半まずまずって感じです(偉そうですが)
認知症に関してもう少し掘り下げて欲しかったし、育児との対比なのかと思っていたのでそれは肩透かし。
まぁこの映画の本質はそこじゃ無いんでしょう。
母でも一人の女性である。
それはそれで気持ちわかるんです。
でもそれを差し置いても方法って絶対他にあるしあんな切り捨てる様なやり方は許せない。
その上で平然と戻ってくるのもなんだか納得出来ませんでした。
少なくともあの時あの瞬間に罪悪感はそれほど無かったと思うんですよね。
あと劇中の長澤まさみの台詞である『親だからってずっと正しくいられるわけじゃ無い』という言葉。
勿論それはその通りだし私だって常に正しい事をしているなんて驕りはありません。
でも少なくとも子供達の前でだけは正しくあろうとしています。
それが全てでは無いにしても私は家族を第一優先という気持ちだけは忘れずにいたいと思いました。
ゆずきよ

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