三隅炎雄

密告(たれこみ)の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

密告(たれこみ)(1968年製作の映画)
3.8
安藤昇の和製ノワール。瀬川前年の『暗黒街シリーズ 荒っぽいのは御免だぜ』は実験的で奇っ怪なノワールだったが、こちらはきっちりジャンルの枠内に収めた仕上がり。ただ砂利集積場で突如始まるダンプカー軍団とのアクションは非現実の方へ一歩踏み込んだユニークな演出で、鈴木清順の映画に近い刺激がある。ブルドーザーで安部徹が生き埋めにされる描写も鮮烈だ。ここらは『荒っぽいのは御免だぜ』で見せた実験を彷彿とさせる。
日本的な湿っぽい劇伴が外国映画風のいいムードに水を差すが、それがあるから東映映画になっている、垢抜けきらないのが東映でいいのだとも言える。フランス映画調のキザなラストに「千鳥まんじゅう」の看板をあえて入れるセンスが楽しい。あまりカッコつけぎるのもなと、劇伴と共に演出家の照れかもしれない。
三隅炎雄

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