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夜の鳩のzhenli13のレビュー・感想・評価

夜の鳩(1937年製作の映画)
3.7
オープニングのネオンといい、でこっとした島田髷の二人が歯を磨く浅草の路地にラジオ体操的な威勢の良い節が聴こえてきて、これいつ頃の設定?と若干混乱。ネオンが物語全体のメルクマールとなり、いちおう公開当時の現代物ということになるのだろうか。この序盤の妙に間伸びした感じ、台詞少なく、わざとガラガラうがいを響かせて、こののったりした感じが好いなぁと思ったが、全体的にはややテンポが悪く70分強にも関わらずちと長く感じた。『花ちりぬ』と同様切り返しなどの反復は無く、ショットは素晴らしく見応えある。林喜美子には燗が熱すぎて叱られるという『花ちりぬ』と同じシチュエーションが用意されている。

もう若くはないことに焦りを隠せない小料理屋の元看板娘役の竹久千恵子(老けてるというよりしゃくれ気味で痩せてるので老けて見える)が嫉妬したり狼狽えたり落ち着きのない様子は身につまされる。看板娘になったこともなく既に若くすらないが、他人事ではない…
だめんずに依存する母から妾になることを持ちかけられ断ったら捨てられる梅園竜子のおしげにもスポットがあたり、間伸びはしててもとても丁寧な演出であったし、酉の市のかなりな賑わいを俯瞰で、ときにドキュメンタリーのように長めに撮っているのが好かった。あとふがふが歯ナシの高堂国典然とした高堂国典が好かった。彼が店に預けて立てかけてあった酉の市の熊手飾りに、竹久千恵子の投げたグラスが当たって壊れるというオチも。
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