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夜の鳩の一のレビュー・感想・評価

夜の鳩(1937年製作の映画)
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これもすごいイイ。ほとんどが小料理屋たむらの内部で撮られていて、さすがに絢爛セットの『たそがれ酒場』とは比較はできないが、しかしカメラポジションの多彩さだったり寄りと引きの使い分けだったりで目にも飽きない。人気のない浅草の通りを映すファーストショットやドキュメンタリー調の酉の市シーンも良い。喫茶店でモーニング食うシーンで窓から臨む五重塔はスクリーンプロセスかな。とことん浅草映画。20代半ばでもはや年増扱いの竹久千恵子がよりによって惚れる月形龍之介、登場した時点でフサ黒髪かき上げまくってて笑う。若い女は若い女で親の金ヅルにされて救いなし。武田麟太郎のあまりにもな原作・脚本。しかし店の隅っこでいつも脳内将棋しながらひとりで飲んだくれてるジジイが熊手背負ってやってくる軒先の情景なんかも捨てがたい。花街から撮影所に通い、芸者と結婚し、監督業辞めてからは夫婦で茶屋を営んでいたという生粋の遊び人・民三の生涯に今興味津々。
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