※ネタバレ含※
湖底に沈んだ屋敷をスキューバで探索する動画配信主カップルが、怪奇現象そして迫りくる酸素リミットという2つの敵と戦いながら脱出を試みるホラー/スリラー作品。
「若者が遊び半分で入った建物の主が実はやばい連中でヒドイ目に遭わされる」
というプロット自体はどこにでもあるけど、そこに「水中」という設定を合わせるのがユニーク。
「なんでもない既存の価値どうしを合わせるだけで新しい価値は作れる」
という思考は創作やビジネスの王道的なアプローチで、今作はそのお手本みたいに上手な組み合わせだ。
ストレートなオカルト展開になだれこむ後半以降から脚本や演出のアラが目立ち始めるものの、序盤〜中盤くらいまではなかなか楽しめた。
冒頭で「THE DEEPHOUSE」というタイトルがゆらゆら揺れながら画面の上から下に沈む見せ方とかシャレててワクワクする。
家具や調度品が片付けられないまま水に沈んだ家の室内ってあまり見たことないから新鮮だし、椅子や燭台が緑色の水中にフワフワ浮いてる様子は幻想的で綺麗だ。
逆に言えば設定以外に長所の少ない出オチの作品という感は否めない。
沈んだ屋敷の全体像とか、もっと「ドヤっ!!」てくらい見せびらかして欲しかったな。
せっかく高性能のドローンカメラと一緒に潜ってるのに!
設定だけの作品なんだから、割り切ってそこくらいこれ見よがしに強調すればいいのにな。
仮に監督がギレルモ・デル・トロで、潤沢な予算も与えられてれば、きっと美術的にこだわりまくった最高の映像になってたろうな〜なんて妄想してしまった。
溺れ死んだ女の子がキリストの磔刑を模した姿勢で水中を漂うラストシーンなんかも、より美しく演出できなかったのかと残念だ。
「水中で揺れる死んだ美女」といえば何を置いても『狩人の夜』が珠玉、かつ個人的に絶対視しすぎており、他作品における同様のシーンにはどうしても厳しくなってしまう。
あとトニ・フリッセルが撮影したBill Evans『Undercurrent』のジャケット写真とかも最高の水中レディ画だね。
とはいえ悪魔崇拝のイカれ家族が遺した8ミリフィルムのスナッフ映像は『フッテージ』のような不気味さがあり、最後に少しワクワクできた。
日本版の主題歌はぜひ日本のスリーピースバンド "水中、それは苦しい" に担当してもらいたい。