ふわふわ

VORTEX ヴォルテックスのふわふわのレビュー・感想・評価

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
4.1
人生は夢の中の夢…

ギャスパー・ノエ監督作品は初めてでした。

年老いた夫婦は夫は心臓病、妻は認知症を患っている。
2人の生活を右と左の分割された映像で追っていく。

妻は近所を徘徊し、夫の事も「知らない人」とし、認識出来なくなる。
夫はそんな妻を追いかけ近所を探したり、後始末をする。
2分割にされた映像は見にくいだろうかと思っていたけど、意外と2人の行動をきちんと追う事が出来てわかりやすくて良かった。

息子が登場し家族会議に至るところは、私も経験したのでなんだかとても親近感があり、フランスだろうがうちの家族だろうが一緒なんだなと安心した。

妻が家族会議の時にわからないままも、揉めている家族を見て「ごめんなさい」と謝っていたのが悲しかった。
わからなくて辛い思いをしている彼女が可哀想だった。
薔薇だっていつかは枯れていく。

夫にも違う側面があり、息子も完璧な人間ではない。
だからこそいろんな家族にも起こりうるだろうという“老いる“事について考えさせられた。
自分の両親と私自身を見せられているようでとても辛く、反対に何故か勇気づけられ心が救われた部分もあった。

演技とも思えない表情に驚き、
冒頭の若い女性の歌のセンスに唸り、
さりげない墓への見識をテレビのナレーションで語り、
所有物を淡々と無くしていく無常感などなど、どこをとっても丁寧で考えられた素晴らしい映画でした。
鑑賞後は2人の葬儀に参列した気分になりました。

年齢的に"死や老い“は人ごとではない。
後悔しないよう優しい言葉をかけよう。
ふわふわ

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