よねっきー

VORTEX ヴォルテックスのよねっきーのレビュー・感想・評価

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
4.0
おれの愛する『CLIMAX』を撮ったギャスパー・ノエのことだからハズさないだろうと期待してたんだが、2画面の使い方があまりにもお粗末で、ちょっと面食らってしまった。こんなに上手く扱えてないとは。『ルクス・エテルナ』の2画面話法はもうちょい冴えてたように思うけど……。

本来なら1画面のクロスカッティングで十分描けるものを「わざわざ」2画面の長回しでやっている、という印象が終始拭えない。せっかく2つの画面と「認知症」というテーマもあるのに、左右の画面で齟齬が生じることもなければ、二つの運動が気持ちよくリンクするということもなく、単純に情報量で圧倒してくるということさえない。ただの監視カメラ的なマルチカム映像に陥っている。それだけならまだいいが、2画面合わせて普通に1つの画面が出来上がっちゃってるようなシーンもひとつやふたつじゃなく、ちょっと笑ってしまった。

尺もやたら長い。この緩慢とした展開にリアリティを感じた人もいるみたいだが……認知症の祖父母がいた自分が断言しよう。リアルはこんな生ぬるいモンではない。認知症ってほんとに30秒前に言ったことをすぐ忘れて会話無限ループになったりするから、そういう不穏さも本当はもっとテンポよく演出できたと思う。わざと緩慢にしてるとは思うが、その間2画面であることが活かされる瞬間がなくて退屈だ。

最後のカメラがどんどん引いていくモンタージュとか、ラストショットの浮遊感なんかは好きだったが、全体通して結構ガッカリ映画体験だった。ノエ、抑えた演出とかしない方がいいよ。向いてない。またバチ狂ったところを見せてください。
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