ねむろう

VORTEX ヴォルテックスのねむろうのネタバレレビュー・内容・結末

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

2024新作_003


"死"より残酷な、"生"――


【簡単なあらすじ】
映画評論家である夫と元精神科医で認知症を患う妻。離れて暮らす息子は、2人を心配しながらも金銭の援助を相談するために家を訪れる。心臓に持病を抱える夫は、日に日に重くなる妻の認知症に悩まされ、やがて、日常生活に支障をきたすようになる。そして、ふたりに人生最期の時が近づいていた…。



【ここがいいね!】
老いた老夫婦が、それぞれの死を迎えるまでを描いているわけですが、スプリットスクリーンでそれぞれの視点、いろんな人の視点が入れ代わり立ち代わり映し出されます。
それぞれの視点で見える世界を切り取っていることによって、全く目が離せない作品になっていました。
また、あっと驚くようなアクションがあるわけでもない作品なのに、それぞれの画面で展開されていく話についていくために、それぞれの人生に食らいつかなければならないという緊張感
を持った作品だったかなと思います。
それがそのまま、二人が死を間近にしながらも、自分の「生」、自分の「人生」にしがみついているようにも見えて、非常に興味深く見ることができました。
最終的にこの老夫婦二人は、どちらとも死んでしまうわけですが、旦那さんの方は心臓病、そして奥さんの方は認知症、それぞれが近からずも遠からずなことによって死に行くわけです。
奥さんの方が認知症を患ってるっていうことで、そもそも言い方は悪いですが、とても合理的な動きではない1 日を過ごしているように見えます。
それに対して、面倒を見る旦那さんの方も、奥さんが知っているのかどうかわかりませんが、愛人がいるという、認知症でなくとも非合理的な面を持っているというところが、それもそれで興味深かったなと感じます。



【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
最終的に、旦那さんの心臓の状態が急変して亡くなるわけですが、夜から朝まで書斎で倒れたまま、まだ生きており、病院に運ばれて死ぬという展開でした。
しかし、そこまでちゃんと死なずにいられるということがあるのかなと思いました。
また、奥さんの方もおそらくガス中毒で死んでしまう流れでしたが、彼女が亡くなる時には神への言葉を残しており、それが作品の中では全くやっていなかったことにもなりますので、奥さんが自殺を「意図的に」したようにも見えて、最後の死に至る行動が、これまでのように非合理的な行動だったのか、それとも意図を持って行ったものなのかがわからない内容になっていたなと感じます。



【ざっくり感想】
作品の一番最初には「心臓よりも先に脳が死ぬすべての人へ」というテロップが入ることによって、認知症への理解も含めて、いろいろなことが語られていくわけですが、やはり「死」よりも残酷な「生」が、ありありと焼き付けられていたように思います。
もちろん、その面倒を見る人たち、今回で言うと息子ですが、「息子も辛いんだ」ということを言ってはいけない空気にはなるのですが、では、両親を亡くし、妻も薬物中毒のセラピーをうけながら、キキを育てているような人生の中で、「よりよい生」って何なんだろうか、ということを考えずにはいられなくなるような作品でした。
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