こーたろー

VORTEX ヴォルテックスのこーたろーのレビュー・感想・評価

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
3.5
ギャスパーノエ監督最新作

本作は夫婦の最期を分割した2画面でそれぞれの視点から同時に写していくといった変わった撮り方をしていた。
夫婦だけじゃなくて息子も分割した画面で映されるが、この3人全員一見すると相手のことを思いやっているようで、実際は自分のことしか考えていない。登場人物それぞれ心が通じているようでその実、相手のことより自分のことしか考えていないといった利己的な心情を決して交わることのない二つの画面で表現したのかなと感じた。

それと映画冒頭はエンドロールから始まるのも変わっているなって思った。この映画の本当の終わり方として、2人が死んだ後に長年住んでいた家から徐々に物が整理されていき、最終的には何も残らない空っぽの部屋になるシーンは空虚さを通り越して恐怖を感じた。
そのラストシーンを見て、夫がこの家には思い出が詰まっていて、物も全て持っていけないからこの家から出たくないと言って施設に入ることを拒否した時のセリフが現実味を帯びていたことを再認識した。

この映画は相手のことを思いやりながら生きることができるからこそ死んだ後も残る思い出といったものが存在していて、家族と接している時ですら利己的な考え方しかできない生き方をしていると、映画で辿ったような寂しい末路を送ることになるよっていったメッセージだったのかなって思った。

"心臓より先に脳が壊れる全ての人へ"