悪魔の毒々クチビル

ライトニング・ムラリの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

ライトニング・ムラリ(2021年製作の映画)
3.7
「スーパーヒーローだ」

惑星が700年に一度、特殊な配列になった時に発生した稲妻に打たれた質屋の息子がスーパーパワーを得たお話。


インド産のヒーロー映画です。
インド映画らしく2時間40分近い長尺な作品だけど、皆マーベルやDCで長いヒーロー映画にはもう慣れっこだよな!
因みにミュージカルシーンはないけど、ちょいちょい曲は流れます。

インドのヒーローってどんなモノかと思いましたが、舞台が田舎と言うか村なのでめっちゃローカル感が凄いです。
主人公のジェイソンはいつかアメリカでの成功を夢見るお調子者。
正直中盤くらいまで大して魅力を感じなかったんだけど、父親の秘密を知ってから段々とヒーローの自覚を持っていく姿はベタで良かったです。
ライトニング・ムラリを名乗る経緯も好き。
恐らくはジェイソンと良い感じになるであろう、空手の先生との関係というか距離感も結構好き。
一方のヴィランは別の場所にてジェイソンと同じタイミングで雷を喰らった冴えないおっさんシブ。
このおっさん、孤独を拗らせ過ぎて精神的に不安定になっているし、幼い頃からずっと片想いしている相手への執着だけで生きていて、それが原因で凶行に走るんだけど行動理念がそれ以外何もないって言うヴィランも珍しいような気もします。
別に世界征服を目論んでいる訳でもなく、富を得ようとする訳でもなくただ好きな人の気を惹きたいだけ。そういうキャラ付けもまたローカルっぽさが出ていました。

あと力を得たもののスーパーヒーローという存在を知らないジェイソンに、アメコミを貸して色々教えていくぽっちゃり甥っ子が可愛らしかったです。
「スパイダーマンは蜘蛛に咬まれてパワーを得たんだ。バットマンは…多分クリケット中にバットで殴られたからかな」みたいに詳しいのか詳しくないのかよく分からない所も微笑ましい。
こういうビギニング系ヒーロー映画だと、まずはメインヴィランの前にデモンストレーションがてら他の悪党と戦ったりするもんだけど、如何せん小さな村で該当する悪党が居ないので暴力警官を懲らしめるくらいしかシブ以外とのバトルシーンがないのもローカルですねぇ。

シブもシブでヴィラン的な名前を名乗るではなく、自分の犯した罪も全部ライトニング・ムラリに擦り付ける小悪党っぷりが絶妙に腹立たしいです。
因みに二人とも力を得た経緯が同じなので能力も同じです。まぁ超人的な身体能力と念力っていうシンプルなものですね。

ジェイソンの義兄の警官や署長のクズ具合も目立ちましたが、基本的に割とコミカルな内容ではありました。
が、後半は子どもも犠牲になったりと意外とシリアスな展開となり、狂気に呑まれたシブとラスト15分でやっと正式なスーツを装着したジェイソンとの一騎討ちも中々見応えあるものになっていました。

そう言えば途中でジェイソンが自分のお金を盗んだ相手にぶちギレたシーンで、周りが何故かジェイソンに「言い過ぎだ、謝っておいた方が良い」みたいに諭すくだりがあって「はぁ?」ってなったんだけど、これは文化の違いなのかな?
確かにいつもは真面目な人間だったんだろうけど、もう盗んだのも確定している訳だし誰だって自分のお金盗られたらキレ散らかすもんだろと思ったんですがね。
あとウシャとその家族が劇中ぶっちぎりで気の毒でした。

長さに見合った内容なのかは疑問でしたが、ご当地ヒーローを出来る限り派手にしてみました、みたいな作風が思いの外楽しめました。
続編あるなら普通に観たいです。