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アンブッシュのMrOwlのネタバレレビュー・内容・結末

アンブッシュ(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

物語の背景やあらすじなどの情報を入れずに、リーアム・ニーソン主演の96時間の監督(ピエール・モレル)作品と、キャッチコピーとチラシのビジュアルから、中東に赴いた、米軍もしくは欧州のどこかの部隊の話だと勝手に思い込んでみましたが、主役はUAEの部隊でした。物語の舞台は中東のイエメン。アラビア半島の南西で、サウジの南側、紅海とアデン湾に面した国です。古来から政権交代が頻繁に起きている地域、国だったようですね。イスラム教のフーシ派が2015年1月22日にクーデターを起こし、内戦が勃発します。その際イランはフーシ派を支持し、ハーディ暫定大統領側はスンナ派のサウジなどアラビア諸国が支持するという構図の内戦。UAEも対フーシ派のためにイエメンに支援に入り、各地区への物資の供給、治安維持のためのパトロールなどを行っている中、敵の待ち伏せを受け、救出に向かった部隊ともども激しい戦闘になる、という話です。タイトルのアンブッシュは奇襲、という意味でした。馴染みのない国が舞台の物語ではありますが、基地でトレーニングしているシーンから始まり、各隊員の人となりや関係性が理解できるようにしてからパトロールへ向かうところは、物語や感情移入しやすい工夫がされていますね。さすがはリュック・ベッソン作品を数多く撮影し、自身でもアクションの秀作を撮影している監督さんです。UAE部隊が、装甲車など装備が揃っている部隊編成に対し、敵は軍服ではなく普段着で、人数は多いがあまり練度が高くないように見える構図で戦闘が始まるのですが、敵襲もリーダーの指示のもと、歩兵と別に、迫撃砲チームや地雷設置チームが居たり、RPGもどんどん撃ってきたり、監視要員が居たり、更には腕のいいスナイパーまでいる、という見かけ以上に訓練され、統率された集団で、手強いことが伝わることが、絶望感、緊迫感を感じさせ、目が離せない展開になっています。状況確認のために無人機を飛ばしたり、迫撃砲チームを無力化するためにアパッチを向かわせたりと、現場の部隊と、指令基地との連携シーンも良かったです。しかも、アパッチには女性兵士が乗り込むんですよ。チャドル、という顔以外は全部覆うスカーフの上にヘルメット付けて。そして敵の迫撃砲チームを無力化するんですが、敵もRPG持っているんで、対空攻撃もできるので、攻撃を避けながらの戦闘ミッションとなり、このシーンも緊迫感ありました。基地の技官にも女性がいて、イスラム教はどちらかというと男性>女性のイメージが強かったのですが、原理主義的ではない場合は、軍にも女性がいるのかもしれません。あるいは昨今のポリコレへの配慮かもしれませんが。奇襲を受けて釘付けにされたパトロール部隊を大勢の敵襲の攻撃を制圧しつつ救助する、しかも的には凄腕のスナイパーも居て、コイツもなんとかしないといけない、という難易度の高いミッションが良く描かれていると思います。軍事モノ好きには楽しめる秀逸な掘り出し物的作品だと思います。
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