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揺蕩のROYのレビュー・感想・評価

揺蕩(2020年製作の映画)
3.8
シネマテーク・フランセーズの配信プラットフォーム「HENRI」にて鑑賞

https://www.cinematheque.fr/henri/film/151780-oscillation-shun-ikezoe-2020/

英題『Oscillation』

「『揺蕩』は2019年香港で撮影しました。帰国後、逃亡犯条例に反対する民主化デモが起こり、風向きに合わせて世界が変わっていく様子を目の当たりにして本作ができました。今回、松野泉さんが“Oscillation(揺れ)”をテーマに音を仕上げて下さっています。作品紹介を槻舘南菜子さんが書いて下さいました」池添俊さんのツイートより

「2019年逃亡犯条例に反対する民主化デモが起こる前夜の香港にて撮影。香港を旅した時に見た風景は、昔夢で見たような懐かしさがあった。小さな島にひしめき合う高層ビルの下に広がる商店街や市場。未来的でありながら時間が退行するような佇まいの街。日本に帰国しニュース動画を見ると、その街に火炎瓶が飛んでいた。風向きに合わせて世界や人はすぐ変わる。自分が見ていたものは夢だったのか?普段の生活と一枚壁を隔てた先にある微かなゆらぎを拾い集めた」(池添俊さんのHPより、https://www.shunikezoe.com/oscillation)

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2019年3月、池添駿さんは初監督作品『愛讃讃(Jujuba)』を国際映画祭で発表するために香港にいる。特定のアイデアがなくても、彼はSuper 8で日常生活の一部を撮影する。近代的なビルと古いショッピングストリートの間で、近代性と古風さが融合したイメージを持つこの都市に惹かれる。『揺蕩』は、義母を描いた『愛讃讃』、祖母を描いた『朝の夢(See You in My Dreams)』に続く、身近な女性を描いた3作目のフィクションになるはずでしたが、帰国後すぐに香港で民主化デモが発生したため、企画が頓挫してしまった。数日前には平穏だった街に火炎瓶が燃え盛る様子をテレビで見て、映像作家は浮遊して変化する世界を感じている。このようにして、現実と空想のイメージを縫い合わせていく。(槻舘南菜子)
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