るるびっち

屋根裏のラジャーのるるびっちのレビュー・感想・評価

屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)
4.3
スタジオジブリの弟子筋、スタジオポノックのファンタジー作品。
迷宮化した宮崎ファンタジーより、明快で解り易くて好感持てる。
『千と千尋の神隠し』のような不気味さや根源的な闇の魅力はないが、ハリウッド風エンタメの明快なシナリオで、盛り上がって面白く見られる。
宮崎ファンタジーが太陽光と自然の薄暗さがあるのに比べ、電気スタンドの下で見ているような人工的な明るさがある。

イマジナリーフレンドのラジャーは、初めは創造主のアマンダの付き添いみたいな感じで弱々しい。
しかしアマンダが倒れてから、力強く自力で歩みだしていく。主人から独立して考えを持つようになるのだ。
アマンダを失えば、彼女の想像の産物であるラジャーは消えてしまう。
すると話が終わるので、人間に忘れられても生きていける都合の良いイマジナリーたちの楽園が現れる。そこは一つのアイデアだと思う。
このアイデアがあるから話が広げられた。
そうでなければ、少女が大人になる過程でイマジナリーを忘れるという人情噺だけで終わってしまう。冒険を広げるのは困難だ。
その辺は、この原作の利点だろう。

忘れられたオモチャが新しい子供に引き継がれるみたいな、『トイ・ストーリー』的な描写がある。
古いイマジナリーが、新しい子供のイマジナリーに引き継がれるのだ。
オモチャと違って、個人の想像の産物だから新しい子供に引き継がれるのは奇妙だが、その辺もイマジナリーフレンドのバリエーションを自由に広げている。
都合が良いが面白い。

現実の友達よりも空想の友達と結びつくのは、寂しさに対しての裏返しだろう。
ラジャーを生み出したアマンダには、秘めた寂しさがあった。何故ラジャーが生み出されたのかという謎は、後半で浮き彫りになる。
イマジナリーフレンドを食べて永久に生きようという怪物も、恐らく実人生では孤独な人だったと察せられる。
彼はイマジナリーに支えられている。なのに他人のイマジナリーフレンドを食べ続ければ、やがて虚無になり孤独の内に身を亡ぼすだろう。

クライマックスを含めて盛り上げが上手い。
宮崎さんの影響下を離れ(しっかり日テレやディズニーとは繋がり)、ハリウッド的な作り方に学んでいるところが将来性を感じられる。
宮崎駿が天才でも、周囲が真似できないのではスタジオとして再生産は困難だ。
ハリウッドのシナリオのように、既に書き方が確立しているものであれば、これからもテーマを変えて色々な物語が作れるだろう。
創造主のアマンダから離れてもラジャーが冒険できたように、宮崎駿や高畑勲から離れてポノックは旅立つのだろう。
ディズニーという、イマジナリーを食いつくす怪物に襲われなければよいが・・・(絶対悪口書くよね💦)
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