Jun潤

屋根裏のラジャーのJun潤のレビュー・感想・評価

屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)
3.7
2023.12.22

アニメーション制作:スタジオポノック

空想の世界を冒険する少年・ラジャー。
彼の正体は、少女・アマンダの空想の中だけに存在する、彼女だけの友達だった。
他の人には見えないラジャーと共に遊ぶアマンダと、彼女を理解できない母のエリザベスの前に、謎の男・Mr.バンディングが現れ、ラジャーを狙い出す。
バンディングの存在に危機感を覚え、警戒したアマンダは、ラジャーの目の前で事故に遭い、意識不明になってしまい、ラジャーの存在は消えかける。
そんなラジャーの前に謎の猫・ジンザンが現れ、忘れ去られた「イマジナリ」が身を寄せる「イマジナリの町」にたどり着く。
そこでラジャーは、色々な子ども達の様々な想像の中で冒険を繰り返しながら、アマンダの元へ帰ろうとするが、バンディングがその行手を阻む。

これは……背景画展示会かな?
ちょっと『思い出のマーニー』×『ハウルの動く城』感も強かった。
背景画の綺麗さや多種多様さは観ていて楽しかったのですが、伏線回収の仕方やストーリーの流れが予想通り過ぎたり、個人的に解釈を広げないとファンタジー考証の整合制も取れないような不安定さもありました。

イマジナリについては、個人的にはだいぶ解釈を広げないといけないなと思いますが、純粋な頃の子どもだからこそ自由で無限大な想像を生み出すことができ、大人になるにつれ忘れてゆく、ここまでは作中で明言された内容をそのまま飲み込めました。
ここからはたしか明言されていなかったと思いますが、人間の脳の可能性というか、自分の頭の中が外の世界にまで影響し得るということが描かれていたんじゃないかなと思います。
まぁ、一歩間違えるとスタンド使いにしかスタンドは見えないってところにも行き着いてしまいそうですが。
かつて子どもだった人たちの想像によって作られたイマジナリ達が、共通のいわゆるクラウドに集まり、それがまた他人の想像にも影響していく、そんなロマンを感じました。

今作のヴィラン、バンディングについては、想像をする子どもの純粋さを失わなかった大人という、アマンダ達とは正反対の、対比して描かれたキャラクターでした。
そして子ども達は何も知らないからこその自由さもありつつ、何も知らないからこその未熟さもある。
しかし大人のバンディングにとっては、現実の悪いところや醜いところも知っているから、子どもには想像できないような不気味な存在を作り出せていたんだと思います。
そう思うと、バンディングと行動を共にしていた暗い少女のイマジナリは、大人が抱える不安そのものだったのかもしれないなと思いました。
そしてイマジナリを喰らう、獏がモチーフのようなバンディングが不安を飲み込むことで、想像ではなく現実の前に倒されるというのは、なかなか皮肉の効いた最期だったと思います。
Jun潤

Jun潤