テルヒサ

屋根裏のラジャーのテルヒサのレビュー・感想・評価

屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)
4.8
想像によって生まれた友達・イマジナリー達の冒険、そしてお別れ。
イマジナリーであるラジャーが主人公で、その視点から現実のアマンダやそのお母さんを描くという世界観がおもしろかった。他人には見えないという設定を活かした行動のリアリティはしっかりありながら、想像世界は映像演出の楽しさに溢れていて、見応えがあり、ワクワクした。
子供の頃に自分の気持ちや童心を支えてくれたイマジナリーは大切にしようというメッセージを感じたし、必ずお別れがあるとしても、思い出を忘れずに生きていくことの素晴らしさを感じた。
ラジャーが亡くなった父親と向き合う気持ちから生まれた、というストーリーが感動的だった。アマンダを愛せるようになる、良い演出だった。お母さんが傘の文字に気づき、アマンダの回想になるシーンは感涙。父親についての言及はあの星形の箱と少しの回想で十分。ラジャーに父親的要素を持たせるとしたら、もう少しカットがいるけど、今回はなかったわけで。
キャラクターの影のグラデーションみたいな表現が印象的。フランス人のスタッフが関わったらしく、アニメのパキッとした風味が薄れ、幻想的な画面の風味があり、作風とマッチしていると思った。
作画は流石のポノッククオリティ。ジブリのDNAをしっかりと受け継ぎながら、オリジナルの雰囲気がいい加減でブレンドされていた。百瀬監督の要素みたいなものも見え隠れしていて、主要キャラ以外のイマジナリーなどの表現が独特で魅力的だった。
ただ「閉店セール」や「小児病棟」などの背景の日本語が気になった。会話の流れやストーリーの流れを踏まえると、省略できる気がする。親切ではあったが。
安藤サクラ、山田孝之は声優としてもすんごい。
序盤のタイトルまで、アマンダの事故まで、イマジナリーの世界とお仕事、エミリとの別れ、アマンダとの再会とクライマックス、エンディングというストーリーの構成は良かった。他キャラクターの見所も散りばめてあったし、だらける場面がほぼなかった印象。ラストは結構好き。

「消えないこと。守ること。絶対に泣かないこと。」
テルヒサ

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