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屋根裏のラジャーのmichikoのレビュー・感想・評価

屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)
3.5
こういう話には極端に弱く、無条件で泣いてしまう笑 子と親に覆い被さる試練ともがきに涙した。

イマジナリーフレンドはこれまでも様々な作品にて、一人っ子だったり友達がいなかったり、何かしら寂しさへの自己防衛反応として描かれていた。本作でもやはり主人公の少女アマンダの周囲の環境には何かしら問題があり、彼女は“イマジナリー”を作る。そんなイマジナリーフレンドとの別れとは、その寂しさを乗り越える時や現実を受け入れた時である。つまりその別れとは、表面的には彼らの事を忘れてしまうかもしれないが、それは彼らの死では無く、彼らを心に宿したまま共に生きていく事である。

本作ではイマジナリーを食おうとする悪役が子供向けとは思えない程、それはまるで『IT』のペニーワイズの如く恐ろしく描かれる。彼に食われる事は物語内でも言われていた様に心が壊れてしまうという事なのだろう。忘れ去られる事と食われる事は同じでは無い。だからこそあそこまでのホラー演出が必要だったのであろう。
イマジナリーとの別れを拒んだ彼は、つまりはその試練を乗り越えられなかった大人である。そんな重すぎる設定を子供が理解できる訳もなく、完全に大人に向けられた作品である。

所々ご都合主義、世界のルールの不明瞭さ、必要性に疑問が残るシーンなど、気になる所は多少あったが、ラジャーの正体が分かるシーンでは涙なくては見られなかった。
前述の通り、子供向けとしては思えない怖いシーンが多くあるのは必要だとは思うが、意外ではあった。
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