ネノメタル

ミドリムシの姫のネノメタルのレビュー・感想・評価

ミドリムシの姫(2022年製作の映画)
4.5
1.前作との比較🐛
前作『ミドリムシの夢』において「大人の青春群像劇」と言う作風以上に「路上監査員(ミドリムシ)」という職業そのものに更にグッとフォーカスを寄せたストーリーとなっているのがとても印象的だった。
それが功をなしてか主人公・野上幸子(河井青葉)をはじめ、同僚として働く様々なミドリムシたちの心象風景を写像することに成功していて、前作以上に登場人物たちへ深く感情移入して物語に入り込めた。めっちゃ地味って訳でもなくてあと今回新人ミドリムシとして出演してた青野竜平さんもラスト付近サプライズを見せてくれるしで前回同様にスカッとする側面もあった。
個人的意見を言えば前作より今作の方がスルメ度は高いと思う。
昨日観て今日、公開中にもう一回は見に行きたいと考えているほどだから。
とはいえ別に前作が受け入れなかった訳ではなくて、このfilmarksでのレビューでも評価してるし、5000字ぐらいの熱いブログを執筆するぐらいとても面白かった事を断っておきたい。

ただ、前作を見た後のブログ記事内でのレビューで私は以下のように率直な意見を付記している。

「続編があるとすれば、本作以上にもっと二人の"間合い"とか、"会話劇"とかにフォーカスして欲しいなと思ったりする。」

この「二人」とはもちろん今回も出演しているバツイチ男シゲ(ほりかわひろき)と、前作のみの何事もキッチリしなければ気が済まない実家暮らしのマコト(富士たくや)のことだが、そのお二人の魅力的なキャラクターが霞むぐらい目まぐるしいストーリー展開が幾分慌ただしいという印象が少なからずあったと思う。
では今作ではどう変わっていっただろう。

2.姫にガチ恋🐛
今作はそんな私の懸念めいたものを見事に払拭している。
とにかく今回のバディ、主人公・野上幸子と超ストイックな元・教師のベテランミドリムシ(大高洋夫)が絶妙で観ていて二人の会話シーンは結構テンポがあって心地よかった。これは後から分かるけど、二人どこか性格が似ているのだと思う。本作の根底をなしているのは、彼らの一見真面目そうというか「なんでこの職業選んだの?」というどこか抱える心の闇のようなものが徐々に浮き彫りになっていく構造で、より深く彼女ら登場人物たちへの心象風景をより深く理解し、共感することができたように思う。
.....などと、堅苦しい言葉使ったがとにかく野上さんのこういうどこか影があって芯のある女性のようにも見えてどこか脆い面もあるみたいなキャラクターがとにかく魅力的だったのだ。話は全然違うが安田弘之著『ちひろさん』という漫画の主人公を思い出した。
あの主人公ちひろさんの方が確かに心の闇の部分はとても奥深いんだけど野上幸子の方が身の回りにいそうでいない、いやもしかしたらいるかな、ぐらいの絶妙なリアリティのある女性である。あの妙に理屈っぽいハキハキした感じの口調だとか、妙に私服が我々男でも分かるレベルのオシャレさだったりとか、下ネタ言いがちなジジイにも過剰反応せず軽く受け流したりとか、妙にフワユル・インスタ映えなフェミニン女過ぎず、かと言って真逆に位置する男か女か分からんみたいなツイフェミのガチ勢みたいなああいう感じでもないこの匙加減ってかこの絶妙感が最高なのだ!
あ、告白します。
私はどうやら、もはや野上さんに「ガチ恋」してしまったようです。
そう言った意味では、本編中「おばさん」などと抜かしたドライバー(仁科貴)や極悪YouTuberどもは断じて許せません☠️
そういや仁科さんは去年公開された某女子高生殺し屋二人組映画では893に散々な目に遭ってたけど今回も結構散々な目に遭ってます(笑)

3.舞台挨拶でのトーク🐛
前作・今作いずれも真田幹也監督と出演のほりかわひろきさんの舞台挨拶にも参加しているが、毎回掛け合いも独特の間があって凄くツボなのだ。
その時に早くも第三作目への展望トークもあったがタイトルはどうなるのだろう?
今まで「ゆめ」「ひめ」と「め」で韻を踏んでるので今度もそれで行くのかなど考えたり、そうなったら「"め"で終わる二文字」ってことで『ミドリムシのカメ』『ミドリムシのサメ』『ミドリムシのウメ』ぐらいしか思い浮かばないしで、3作目のタイトルは一体どうなるのか今からもう気になっている。
あと先の理由で()野上幸子さんの主人公、再登板は強く望むところだが、どうなるんだろう。

あと舞台挨拶の後半で真田幹也監督は
「世の中のドラマには医者であるとか刑事であるとか教師であるとか定番の職業を題材としてるんだけれども、このように"路上監査員"などのようなマイナーな職業にに目を向けたものは極めて少ない。こういうニッチな職業に目を向けることによって、むしろそこにしか生まれないドラマが生まれるんじゃないかといつも思っている。」
というような事を仰ってたがその言葉に深く共感できるものがあった。
というか、路上監査員というマイナーな職業にフォーカスしたからこそ、そこから透けて見える人間模様や心象風景など我々の日常生活にも当てはまる、ある種の一般性や共感が生まれるのではないだろうかとすら思うのだ。
「鑑賞後、町のミドリムシ達が皆ヒーローに見えるそんな映画だ」と前作から今作にいたるまでずっと思ったものだが、結局、我々は人生に、そして自分の生業に、自分の愛する人達にプライドを持って生きる者は誰しもヒーローなのかもしれない。
そう、ミドリムシとは彼らだけではない、我々もミドリムシ、だったのだ。

(付記)あ、真田監督、本作ってか前作を見て以来、大阪の街を歩いて路上監査員の方々に俄然注目するようになりましたが、帽子に緑色の制服、そして大体二人組と東京とほぼ同じスタイルだと思います。
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