くりふ

怪物宇宙船のくりふのレビュー・感想・評価

怪物宇宙船(1960年製作の映画)
3.0
【侵略!ヴィー娘】

アマプラ先生に見ろと言われて、見ました。Z級SFおもたら、意外や愛の、掘り出しモノ!

1960年メキシコ産。最近、“終末映画”『ニューオーダー』を見たばかりだったので余計に、メキシコにもホンマ、平和な時代もあったんや…とほのぼのしみじみしてしまった。

謎の原子事故?により男が死滅した金星から、子孫を絶やすまじ!との使命を帯びて、男をお持ち帰りしようと何故か…いや当然?レオタード姿のヴィーナスが二人、地球にやってくる。そしてメキシコの森に降り立つと、いきなり出会ったのが…。

主人公、歌って踊るホラ吹きカウボーイのおっさん、エウラリオ・ゴンサレスは当時、“ピポロ”て愛称のスターだったらしい。南インドでいえばラジニカーント…但し弱っちい…みたいなもんか?中途半端に、好き勝手やっています。憎めないと言えばそう。

ヴィーナス二人はミスコン出身の美人女優さんで、メキシコ映画にはけっこう、出てるっぽい。皮下脂肪の豊かさが、いかにも60年代で素晴らしい!モノクロなのが残念なり。

うち、ヒロインのアナ・ベルサ・レペさん、Wiki記載のキャリアが凄いのですが…本作の紹介で“主役を演じたことで国際的に知られています。”…ってええ!コレ、そんな映画なん!

キャスティングに力を入れてますから、物語も特撮も、肩の力を抜いて力を入れています。

宇宙シーンが妙に、デキがいいなと思ったら、『ソ連人工衛星/宇宙征服』ってソ連製ドキュメンタリーからマンマ、流用しているそうだ。…ってええ!いいのソレ、ソ連!

ヴィーナスのお姉さんたち…ヴィーナズは、宇宙最良の男を探していますが、一番近い、お隣の地球に来る前にわざわざ、銀河の果てまで巡ったらしい。他の星の男を何人も拉致して監禁中。これが見た目直接的には、原題も邦題も同じである、タイトルの由来。

バケモンばっか、集めてます。半端な巨人とか。毒出すヤツとか。“骨だけ男”もいるし。…どうやって子供つくるんだろう?

理性的に考えれば、繁殖力を最優先に選んだのでしょうが、見た目になびかないのはエライ。大人の女性ならではの現実感でしょうか。

…なのに、ヴィーナズは愛の素人だったから、一方がチャラ男に口説かれさあタイヘン!女心はバトルを巻き起こす。そしていよいよ、星間侵略戦争へ!(笑)

“怪物宇宙船”は、トランプ政権以降から振り返ると、お隣の国からの脅威、とも思えます。ホラ吹きオヤジはヴィーナズを「てっきり白人の女の子かと思ってた」なんて思い込んだりしてるしなー。

自国への振り返りとしては「フランスはいいよね、全てはキスで解決するから。ここではな、銃弾なんだ」なんて台詞が効いている。『ニューオーダー』以降は特に(笑)。

意外と、深いんです。…と、私は思い込んで楽しみました。

しかし、最後に愛は勝つのです。ラブ&ピース。AIだって愛を知る。メカニカル・ラブなオチもステキ、でございました。

<2022.7.9記>
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