ロアー

ピンク・クラウドのロアーのレビュー・感想・評価

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)
3.5
コロナ禍を予言したかのような映画としては「コンテイジョン」が有名だと思うけど、あっちは割と現実的な想定の元に作られた映画なのに対して、この「ピンク・クラウド」は「床はマグマだからソファから落ちたら死んじゃうよ〜」っていう子どもの空想遊びを大人になってからやってみたようなファンタジーで「床がマグマならソファも焼けてしまうはず」というような現実的なことは無視してるので、どちらかと言うと箱庭の心理実験を観察しているような気分でした。どうしても現実的なことが気になってしまう人には向かないタイプの映画だと思う。これはあくまで、特殊な状況下に置かれた人の心理がテーマの映画。

そんな映画の主人公・ジョヴァナは、自由がないと生きていけないタイプの奔放な女性。

私も自由が欲しいタイプではあるのでジョヴァナの気持ちも分かるけど、いくら相手が幼いからと言って、冗談混じりにも子どもの前で「パパに消えて欲しい」と言ってしまうような人間は信用できない、というかはっきり嫌いなので何か色々とダメでした。

ヤーゴもヤーゴで、出産のリスクを理解してない癖に子どもが欲しいと言ってる気がしてかなりイラついてしまったけど、これもつい現実的な頭で考えてしまうからイラつくんだろうな。

ただ、映画の発想自体は面白くて、私の好きな「低予算なのに発想の妙が際立ってる映画」(例:「SAW」「SEARCH」「MANDAYS」etc.)の類に入ると思うのでその点は評価したいです。
終わりの見えない不安や閉塞感への共感を思えば、ひとつの家での出来事だけを追っていて当然だしそれが正解なんだけど、欲を言えば他の家の中ももっとのぞいてみたかったという思いもある。閉じ込められた組み合わせによっては、相当命運が変わる案件だと思うんだよね(それはもはやスリラー映画脳)。
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