てるーん

ウルトラマントリガー エピソードZのてるーんのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

やりたいこと・伝えたいメッセージは理解できたものの、その結論が提示されるまでの過程が散漫であり、まとまりにかけていた作品、というのが率直な感想。

今作で伝えたかったであろうテーマは「仲間」
であると考えるが、今作で大きく尺を割かれて描写されたのはイーヴィルトリガーやウルトラマンゼットの暴走(セレブロ)であり、これらの要素は直接「仲間」というテーマに結びついていないため、結果的に「仲間が大切である」という結論を導き出すまでの描写が不足し、その結論に唐突なものを感じたのが残念だった。仲間が大切であると伝えたいのであれば、GUTS-SELECTメンバーの活躍をもう少し全面に押し出して描くべきだったと感じる。

またこの作品だけの問題ではないかもしれないが、そんな仲間たちが「ケンゴを笑顔にしたい」と思うようになるまでの過程も十分に描かれていたとは言えず、ケンゴというキャラクターの魅力、そして仲間たちはそんなケンゴのどこに惹かれたのか、という部分については、劇場版という触れ込みであっても本編におんぶにだっこをするのではなく、今作の中でも最低限描くべきことではないのかと感じた。

また今作のテーマは前述したように「仲間」がメインであるにも関わらず、終盤において急に「笑顔」というキーワードが飛び出す点についても唐突なものを感じ、やはりケンゴを支えるにあたって「笑顔」というキーワードを持ち出したいなら、今作の中でも笑顔についての描写をより充実させるべきであったと感じた。

さらに、「人間としてのケンゴ」が今回メインとして描かれていたのに対し、その人間のケンゴは何故ウルトラマンとして戦うのか、という部分には踏み込まれなかったのも惜しかった。ウルトラマントリガー本編でケンゴが至った結論は「光であり人である」であり、その人間の部分が強調されたこと自体は気にならないものの、であればそのまま人間として生きるのではなく、ウルトラマンとして光を行使して戦う道を選ぶのは何故なのかという部分については、今作でも軽くではあるが問題提起されたにも関わらず、「自分は人間である」という所で議論が止まってしまったのは残念だった。

また、テーマ的な部分の他に、ストーリー展開についても気になる点が多かった。予定調和的な展開が多く、ハルキやイグニスの登場などの一つ一つのイベントも淡々と描写されており、全体として盛り上がりに欠ける構成であったように感じた。またセレブロの暗躍やハイパーキーの回収など常に話を引っ張るイベントが存在するものの、そのイベント自体が「仲間」や「笑顔」といったテーマ性に直結している訳でもなく、意味を持った展開に発展していなかったのは残念な所であった。

キャラクターについて、今作で初登場したトキオカ隊長(ザビル)はウルトラマンの力を切実に求めており、そこであくまで人であろうとするケンゴとの対比が生まれていたのは面白かったが、自分がウルトラマンの力を求めた動機を自分で全て語りきってしまうのは面白みに欠け、また最後にはひたすらに「光を」を連呼するキャラクターになってしまったため、格のある敵には跳ねきらなかった、というのが正直な印象。またユザレの消滅によって自身の無力さを呪いウルトラマンの力を手に入れようとしたという動機に反して、イーヴィルトリガーへ変身後はトリガーやトリガーダークを攻撃するなど、ユザレを守るどころか逆にユザレを傷つけるような行動を取ってしまっている点も、キャラクターとしての矛盾や曖昧さを感じた。

特撮面に関しては派手な演出は少なかったものの、夜戦や市街戦などバリエーションは豊富であり、またパワータイプとベータスマッシュによるプロレス勝負などフォルムチェンジを活かした工夫も見られたため、限られた予算内でできることは十分に表現されていたのではないかと感じた。また、ガッツファルコンやナースデッセイ号の質の高いCG戦闘は劇場版においても健在で、特にナースデッセイ号は本編では半ばバンク化され映像が固定化されていたものの、今回は新規で制作された映像も多く見られ、イーヴィルトリガーとの絡みも迫力があったことから良い点であったと感じた。

総合して、テーマやストーリー的な部分で不足している部分は目立つものの、「仲間と絆を繋ぐために人間の姿として生まれてきた」というケンゴの結論自体は納得できるものであり、シズマ会長による「光は1人では輝けない」といったセリフにも心動かされたことも事実なので、全くもって悪い所ばかりではない、という作品ではなかったように感じる。
そんな良い点と悪い点を組み合わせて考えた時にプラスマイナスゼロ、もしくはややマイナスに振れているという評価が個人的には妥当ではないかというように感じた。
てるーん

てるーん