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恋は光のcalinkolincaのレビュー・感想・評価

恋は光(2022年製作の映画)
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冒頭のワンシーンから爆笑した映画は初めてかもしれない。
女の手に持たれたカップから別の女の頭に注がれる液体。腕を組み、微動だにしないその女。
一発でその女が液体をかけた女に忌み嫌われている、嫌な女だとわかるそのワンシーンに、こころの中で「天才か...」と呟いた。

小林啓一監督作品の特徴である「だろう」「なのだ」を多用する「時代劇調」のセリフは今回も冴えわたっていて、特に主人公、西条をとりまく3人の女性、北代、東雲、宿木が会話するシーンは江戸時代調(北代)、昭和調(東雲)、令和調(宿木)の語り口のちゃんぽんで、スマホがなければいつの時代の映画かわからないたのしさだった。
小林監督の時代劇調のセリフには今の時代の語り口では味わえない美しさや感情の機微が感じとれて、私はとても好きだ。当たり前かもしれないが、彼の映画は彼にしか撮れない。

西条役の神尾楓珠さんが良かったのはもちろん、彼をとりまく3人の女性が、恋をしていると西条には光ってみえる設定のとおり、皆それぞれとても美しかった。
特に今まで苦手だった北代役の西野七瀬さんの演技があの難しいセリフまわしに関わらず、とても自然でかつ、感情の揺れが伝わってくる繊細さで、素晴らしかった。何より「恋をして光っている女性」の設定とおり、透明感があってとってもうつくしかった。

東雲役の平祐奈さんは声が転がる鈴のように美しく、汚れのない無垢でかわいらしい女性を好演し、宿木役の馬場ふみかさん(冒頭で液体をかけられていた女性)は他人の彼氏を欲しがりながら、本当の恋に憧れる女性をコミカルにこちらも好演。
タイプの違う3人の女性、それぞれが本当にうつくしかった。

西条には北代が光って見えなかった理由、安易だけど私はその想いが「私以外でも構わないから西条にしあわせになってほしい」と、すでに「恋」じゃなく「愛」になっているから、だと感じたよ。
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